安藤忠雄仕事をつくる: 私の履歴書

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  • 日経BPM(日本経済新聞出版本部) (2012年3月10日発売)
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昨年、自分の兄に子どもができた。甥っ子である。赤ちゃんを見ていると本当に「野生」である。

生きるために泣き、食べ、遊び、学ぶ。それがいつの間にか親に、社会に「飼いならされて」しまう。

何も外を走り回るだけが野生ではない。絵や音楽なども立派な「野生の才能」だと思う。問題はそれを「好き」で自主的にしているか、それとも言われるがままに強制的に、怒られるのが怖く「嫌々」し続けているのかではないか。

好きならば失敗しても、また挑戦したくなる。嫌々なら失敗することも怖くなる。

本当に「好き」かどうかを考えるのも、ある意味自分のなかの「野生」の確認ではないだろうか。



自分も会社に入り、いきなり一つの仕事を任された。無我夢中で取り組み、結果が出たときはうれしかった。そして「面白かった」。だから仕事が「好き」になった。

しかしそれはビギナーズラック。次第に「慣れ」が心のスキを生んで、手を抜こうとする。当然結果は出ないことの方が多い。

失敗しても一生懸命取り組んだことは、次々と反省点が思い浮かぶ。

みんな「失敗」することを怖がっている。企業も、社会もまずは、「失敗」させることからはじめる方がいいのではないか。

それと甘やかす意味ではない「好きなこと」をさせることではないか。



安藤さんの言葉は無骨で厳しい。ぐだぐだ言わない。

安藤さんの建築物も、コンクリート打ちっ放しで、シンプルで時には寒々しい。

でもこの無駄を落とした「シンプル」さが、周囲の自然と調和し、美しさを生み出す。

言葉を受け取る側にも、「野生」がないと、その中にある「あたたかさ」に気づかないような気がする一冊でした。

失敗と反省の繰り返しが「野生」を取り戻すために必要です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年12月18日
読了日 : 2013年12月18日
本棚登録日 : 2013年8月6日

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