たまにはブグログによる”あなたへのおすすめ”に従ってみるかなと、手に取った一冊。
有名なノンフィクションですよね。映画にもなったのかな。
ファッション雑誌「ELLE」の編集長、ジャン=ドミニック・ボービーは、43歳の若さで脳出血を起こし、ロックトイン・シンドロームと呼ばれる、日本語でいえば「閉じ込め症候群」に陥ってしまう。
意識ははっきりしているものの動かせるのは左目の瞬きだけ。
後にリハビリでわずかだが首も動かせるようになったとか。
【体じゅう、重たい潜水服を一式、着込んでしまったようなのだ。】と書かれている。
本書は、20万回以上の瞬きによって綴られた当人の手記である。
当人の資質によるものか、フランス人気質というのもあるだろうが、こんな状態にありながら愚痴や不平不満はほとんどない。凄いね。
文章も洒落ているな。
テオフィル(十歳の息子)は、紙ナプキンを何枚も使って、閉じた僕の唇から流れ出る涎を、そっと拭いてくれた。やさしく、でもおっかなびっくりで。どんな反応が返ってくるかわからない動物を、前にしているかのように。
彼らの母親が押していた車椅子が、ゆっくり止まった。すると今度はセレスト(八歳の娘)が、むき出しの腕で僕の頭に抱きつき、そのまま額に、キスの雨を降らせ始める。呪文でも唱えるように、繰り返し「あたしのパパ、あたしのパパ」と言いながら。
黒々としたハエが一匹、僕の鼻の頭に止まる。そんなところからは下りてもらおうと、僕は顔を振ろうとする。しかしそれが、僕にとっては、オリンピックのグレコ・ローマン・スタイルのレスリングにも勝る、死闘となっていく。
今日は日曜日。
彼の著作のおかげで、いわゆる植物状態というか、肉体の自由は効かなくても、意識は正常を保てるというのがわかったのは大きいと思う。
フランスで大ベストセラーになり、28ヵ国で出版された本書。
しかし、残念ながら、フランスでの出版のわずか2日後に著者は亡くなってしまう。感染症による合併症を起こして。
出版された自分の本は見れただろうか。
もっともっと書きたかったろうな。
- 感想投稿日 : 2024年3月25日
- 読了日 : 2024年3月25日
- 本棚登録日 : 2024年3月25日
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