夏休みの空欄探し

著者 :
  • ポプラ社 (2022年6月22日発売)
3.70
  • (35)
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  • (3)
本棚登録 : 854
感想 : 83
2

暗号をめぐる青春恋愛もの。
爽やかですね~。いや、まぶしいです。
もっと若いときなら感想も違っていたかも。

チーニャさん、あおいさん、あゆみりんさん、なおなおさんに推されまくって手に取りました。課題図書ですね^^
実は、おもしろかったとうわさのあとがきに惹かれたのは秘密です。
まことさんとほん3さんのレビューにも推されました。
私のレビューはどうやら辛めのようで、しかもひねているので、今作を未読の方はどうか上記の方々のレビューを参考にして下さい(笑)

まずは表紙のイチャモンから。
メインの登場人物は4人だけなのでこの絵の4人でまちがいないでしょう。
右端のイルカの浮き輪を持ってる雨音と思われる人物。どう見ても中学生くらいにしか見えない。大学生なのに、4人の中では一番の年長なのにどうしても幼く見える。
その左の体格のいい男子。ええ。これ主人公?ガタイ良すぎないですか。左端のビーチボールで遊んでるのが清春らしいけど、どう見ても主人公と体格まちがってない?

あとがきの一人称問題はおもしろかった。同意できます。というか私も度々悩んでます(笑)
レビューを書くときの自分を何て呼ぶか、悩ましいとこなんですよね~。
主に候補は4つ。俺、僕、私、自分、です。
ええと、十字をイメージして。地図とかにある東西南北を示すようなヤツです。
上(北)=俺 ちょっとヤンキーくさい
下(南)=僕 子供、または学者っぽい
右(東)=私 かっちり眼鏡のサラリーマンっぽい
左(西)=自分 軍人っぽい
この4つの中間点くらいの人称が欲しいんです! 難しいな~。
あとの候補は…………

拙者やそれがし、刀を差したくなるので却下
余、王様になりそうなので却下
オラ、かめはめ波を打ちそうになるので却下
おいら、ビートたけしになりそうなので却下
おいどん、九州出身じゃないので却下
吾輩、猫になりそうなので却下
やつがれ、ばけものを使って仕事人っぽいことをしそうになるので却下(巷説百物語)
小生、乙一さんに憑依されそうなので却下(小生物語)
ワイ、ナニワの商人になりそうなので却下

難しい。ピッタリくるのがまるでありません。

で、かんじんの内容についてのレビューですが、ここからいちじるしくネタバレになってしまうので未読の方はご注意ください。
















ほんとうに、未読の方は厳禁です。絶対見ないでください。


















いいですか?

残念ですが終わり方が好みではありません。
あそこで切るのはいいとして、死ぬとこまで書かないのはいいとしてですが、そもそもヒロイン死なせなくてもいいんじゃねって話です。
最近のヒロイン死に過ぎ問題です。なんか飽きました。そりゃあ死ねば悲しいでしょうが、すこし安直ではないですか。この話でヒロインが死なねばならないような必然性が感じられないというか、違和感がありました。
「じゃあ、どういう終わり方ならいいんだよ。そんなに文句付けるんならおまえが書いてみろよ」と、言われそうなのでちょっと書いてみます。妄想の駄文です。はい、病室から。


「ねえ七輝。ほんとうにライ君に会わなくていいの? あんな難しい暗号じゃ絶対にこの病院にたどり着けないよ」
「……いいのよ。お姉ちゃん。それでいいの。」
七輝は病院のベッドで自分の両脚を愛おし気にさすった。
「来週にはこの脚ともおさらば。ずっと車椅子の子が彼女なんてライ君がかわいそう。あたしはこの夏、最高の思い出をもらったからもうそれでいいの。それに脚だけでなくて腕までいったら、ほんもののお地蔵さんになっちゃう」
「脚はともかく、…………腕はまだわからないでしょ」と、雨音。
脚を切断して様子を見ないとわからないと医者は言っていたが、腕にまで処置が及ぶことも十分ありうるので覚悟してください。と、言われていた。
「ああ。いっぱい遊んだなぁ。ほんとに嘘みたいに楽しい夏だった。ありがとうね、お姉ちゃん。あたしのわがままきいてくれて」七輝は思い出に浸るように目をつむり「でも」といたずらっぽい笑みを浮かべて続ける。
「最後の勝負はあたしの勝ちみたいね。ライ君もなかなか手強かったけどあたしの勝利ってことで」
最後に出した暗号はあきらかに不公正なものだった。七輝自身もそれはわかっている。しかし、そうせずにはいられなかった。もしもライ君があたしの身体のことを知って、それで来なくなったら。がっかりされたら。そう思うと恐かった。だから暗号を出した。絶対に解けない最後の暗号を。ライ君は来たくても暗号が解けないから来れないだけなのだ。そういうふうに自分を誤魔化したかった。
それにライ君自身にも分かっているはずだ。あの暗号は解けないということを。それでライ君を解放してあげることができる。両手両足が無くなる地蔵女から。暗号が解けないんだからしかたないということにできる。
どちらにとっても利益になる。七輝が考えた苦肉の方法だった。
「どうしたの、お姉ちゃん」
七輝はじっと窓の向こうを凝視している雨音に問いかけた。
「ねえ、七輝。……勝ち誇るのは少し早いんじゃないかな」
雨音が信じられない様子で窓の向こうに小さく手を振っている。
その先に少年がいた。片手に菓子箱を、もう片手に花束を持ってその手を振っている。雨音の手を振る姿を確認して力を得たのか、少年は徐々に大きく手を振り、花束を持っていることを忘れたのかまるで旗のように大きく振り、すぽんと手から飛んでしまった花束をあわてて追いかけていた。
七輝の目は少年に釘付けだった。
「彼、暗号以外はかなり不器用なようね」と雨音。
「お、お姉ちゃんが教えたの?」
「まさか」と、雨音はゆっくり首を振った。
「どうして。どうしよう。お姉ちゃん。来ちゃうよ」
「そりゃ、来るでしょうね。で、追い返すの?」
七輝はそれに答えず、髪を手でなでつけた。
「あたし、変じゃない? おかしくない? に、臭ったりしないかな?」
「うん。匂う。恋する乙女のフェロモンがプンプン」
ふざけないでよ、と抗議しながら七輝はきょろきょろと逃げ場を探し、結局布団の中にもぐりこんだ。

もちろん僕はそんな病室の様子を知るべくもなく、開いたままの病室のドアを控えめにノックした。4人部屋のようだったが、さいわいにも3つしかベッドはうまっておらず、七輝以外の2人は検査か何かで外に出ているようだった。
「いらっしゃい、ライ君。きれいなお花ね。ありがとう」
雨音さんは僕から花束を受け取ると「どこかで花瓶を探してくるから」と、病室から出ていった。去り際に、「それ、起きているわよ」と、ベッドの上で丸くなっている布団を指差して。
それでも七輝は布団から顔を出さず、やっと声を出してくれたのは4回目に名前を呼び掛けた後だった。それも「う~」という、返事と言うよりは鳴き声であったのだが、それでも嬉しかった。久しぶりに聞けた七輝の声だ。
「どうしてここがわかったの? あの暗号、どうやって解いたの?」
「うん……。ごめん。実は、全然わからなかったんだ」
「えっ?」
そこで僕はこの病院を見つけた経緯を説明した。必死に何日もかけて暗号に取り組みながらも答えにたどり着けずに焦っていた僕に助言を与えてくれたのは清春だった。
「要は、その病院さえわかればいいんだろう」と。
目から鱗が落ちる思いだった。そうだ。僕の目的は暗号を解くことじゃない。七輝のいる病院をみつけること。いや、七輝に会うことだ。そこからは清春に協力してもらい、七輝と初めて会ったハンバーガー屋を中心に、入院施設のある難病を治療できそうな全ての病院をチェックして七輝という名前の入院患者がいるかどうかを調べることにした。
しかし、病院の方でも電話等で簡単に患者の情報を漏らすわけにもいかず、結局はひとつひとつの病院に行ってみて、病室についている名札で確認するほかはなかった。
「……全部の病院を、病室を……足で探したってこと。だって……そんなの」
「うん。とても僕ひとりじゃ無理だった。友達や仲のいい後輩にも事情を話して協力してもらって。これも交友関係の広いキヨがすごく助けてくれたんだ」
「…………ずるい」
「うん。そうだね。ごめん」
「なんで。どうして、そんなに」
やっとそこで七輝が布団から顔を出した。泣いている。初めて見る彼女の泣き顔に僕はひどく動揺した。
「泣かないで。七輝」
七輝は黙って下を見つめている。何を見ているのか気づいて僕はあわてて足を引いた。昔、七輝と会うときに清春に相談して新しく買ったはずの靴は、病院探しで歩き回ったせいで哀れなほどにボロボロになってしまっていた。
七輝が顔を上げて僕を見る。子供のように泣いていた。鼻水も出てる。しゃくりあげている。だけど僕も同じだった。
「あたし……、脚がなくなるのよ」
「雨音さんに聞いた」
「腕だって……」
「それも聞いた」
「あたし、あたし。ほんとにお地蔵さんになっちゃう。だから、だから」
「好きだ」
なんて情けないんだろう。そこから僕は「好きだ」以外の言葉を発せられなくなってしまった。本当はもっと気の利いた言葉を幾つも用意していたのに、全然出てこない。子供みたいに泣きながら「好きだ」と何度も言い続けることしかできなかった。
気を利かせてくれて病室を出ていた雨音さんが戻るまで、僕たちふたりは、向かい合ったまま両手をつないで、ただただ、わあわあと泣いていた。

お見舞いには毎日行った。行くたびに七輝はパジャマの裾を上げて脚を出した。僕は目のやり場に困ったが、しっかり見て覚えておいて欲しいと怒られた。触って、と言うのでおそるおそる触れるとくすぐったそうに笑ってくれた。脚の切除手術のときは一緒に泣いた。僕にできるのはそのぐらいしかなかった。

その後、ありがたいことに腕の除去は見送られることになった。医者の予想よりもかなり七輝の免疫能力が向上しているらしい。雨音さんには、ライ君といつまでも手をつないでいたい願望が実を結んだのね、と冷やかされた。嬉しくて、その日はずっと手をつないだままだった。それからも会うたびに僕らは必ず手をつなぐ。まるでジグソーの一対のピースのように。

あれからずいぶん時がたった。今でも僕らは手をつないでいる。結婚して娘が2人いる。長女も次女も養子であることを感じないくらい僕たち家族は仲良しだ。近所には雨音さんと清春夫婦が住んでいて2人の間には3人も子供がいる。みんな仲良しだ。今日は長女の結婚式。「お父さんたちってほんとうに仲がいいよね」なんて言われながら僕たちは手をつないで式に出る。
「あのとき、あたしのパズルを解いてくれてありがとう」と、七輝は言う。
「あのとき、走って追いかけてくれてありがとう」と、僕は笑う。

僕たち、雨音さん、清春、子供たち、子供の結婚相手、いずれは孫も生まれるかもしれない。どんどん増えていく僕たちのパズルのピースが描く絵は幸福そのものだった。



てきとうに、ざっくりと書いてみました。作者の方、関係者の方々、ごめんなさいm(__)m
でも、「余命200日」なんて結末より生きて欲しかったので、つい、書いてしまいました。
あと、「おじぞう」という破壊力のある七輝のあだ名も利用しました。
文章力の無さで本作を汚してしまったことをお詫びします。あくまでもこれは私のつまらない妄想にすぎないので、本作が好きな方々、怒らないでね~(o_ _)o))

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月25日
読了日 : 2023年6月25日
本棚登録日 : 2023年6月25日

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コメント 11件

なおなおさんのコメント
2023/06/25

「僕たちのパズルのピースが描く絵」ですと?
キュン度最高です(///ω///)
土瓶パズルにやられました。

みんみんさんのコメント
2023/06/25

いや〜小っ恥ずかしいキュン小説を
あざ〜っす(●︎´艸`)ムフフ
本編読まないからこっちで良い笑

なおなおさんのコメント
2023/06/25

続編も求むw

土瓶さんのコメント
2023/06/25

恥ずかしくてクサくて死にそう(T_T)
なんで書いたんだろ。
いや、本編読め。
ちゃんと「お地蔵」も「靴」も回収してんだから。
続編。無理。

みんみんさんのコメント
2023/06/25

いやいや高校生までならキュンできるけど
大学過ぎたらイヤ〜興味ない( ̄▽ ̄)

自分の事をなんて呼ぶか…興味深い笑

まことさんのコメント
2023/06/25

土瓶さん♪

図書館で、借りた本なので、あまりよく覚えていませんが、凄いですね!
レビューワーから、小説家に転向できるのでは!と思ってしまいました。
七輝、死ななくても、ハッピーエンドに持っていけたんですね!
作者の方にも、教えてあげたいですね。
こっちの話の方が好きです。

あゆみりんさんのコメント
2023/06/25

土瓶さん、読むより書いたほうがいいですよ、土瓶さんの書く物語はとっても面白いっ(∩ˊ꒳​ˋ∩)・*
胸キュン青春と怪談をお願いします。

チーニャ、ピーナッツが好きさんのコメント
2023/06/25

土瓶さん、こんばんは♪
うわぁ〰️凄〜い✧(✪▽✪)✧
凄すぎます!!!!!!
土瓶さんの小説、いいっ!!

胸キュン度❥❥❥❥❥
⁽⁽٩(๑˃ᗨ˂)۶⁾⁾ 最ᵃⁿᵈ高 デス♡

土瓶さんのラストの方が好きです*❃( ૣᵕ◡ᵕ ૣ )✧

1Q84O1さんのコメント
2023/06/25

全フォロワーがキュンした♡
土瓶氏が小説家デビュー!
土瓶師匠サイコーです(〃ω〃)


で、自分を何て呼ぶか…?
そんなの簡単ですよ!
どこかのめろんさんみたいにカリスマレビュアーって名乗ればいいじゃないですかw

土瓶さんのコメント
2023/06/25

みなさま、ありがとうございますm(__)m
しかし、書いた後、激しく後悔して全身が痒くなったのでもう無理。
投稿もずいぶん迷ったんですが、やっぱり本書のラストはなんだか尻切れ感と投げやりな感じがしてもったいなくて。ヒロイン死ななくてもいいんじゃね? 死ななかったとしたらどんな終わり方にって考えて、それでレビュー代わりに書いてみた次第です。

もう自分は……Iじゃ変か(笑) 日本人だしな~。
わし……、う~ん?
どこかのめろんさんみたいにはなれそうもないです^^

aoi-soraさんのコメント
2023/06/27

土瓶さん
コメント遅くなりました!

えっと、びっくりしましたよ~
知らない間に続編が出ていたのかと、感動していたら土瓶先生の執筆とは!!
もう、作家デビューですね(⁠◠⁠‿⁠・⁠)⁠—⁠☆

一人称問題は、かなり面白かったでしょ!?
楽しんでもらえたようで嬉しいですっ!

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