『検証捜査』。いわゆる「警察小説」である。
いつからだろうか。いや、最初からか。僕は「警察小説」とは、イコール「ミステリー」であると誤解をしていた。つまり、「警察小説」といえば、誰もが憧れるような「刑事さん」――ドラマになったとき、誰が演じるかを想像するのが楽しい――が登場し、誰もが見落としていた手がかりを武器に、犯人を追い詰める、というプロットが当たり前だと思ってしまっていたのである。
本書は、「警察小説」ではあるが、決して「ミステリー」ではない。これが僕の感じた本作への印象である(奇しくも本書の「解説」には「明らかにミステリーでない作品はすべてミステリー」という何某の説が紹介されており、なんとも悩ましい)。
本作には、「解説」で田口さんが述べているように、「謎」がふんだんに盛り込まれている。もちろん、そこに注目して本作を「ミステリー」と判断することもできるだろう。
しかし、いわゆる「ミステリー」にあるような「華麗な推理」は本作にはない。「警察小説のニューヒーロー」と謳われる本作の主人公「神谷悟郎」も、どうにも「抜けた」部分が多くて、今ひとつ魅力を感じない。
思うに、本作は「神谷悟郎」という人間の成長を描くストーリーなのではないか。たまたま「神谷」が「刑事」であったというだけで、たまたま成長のきっかけが「捜査」だったというだけで、それらの要素は物語の中心とはなりえない。ここが、いわゆる「ミステリー」と本作との間に一線を画する所以である。
だから、「ミステリー」と思って本書を読むと、どうにも「事件」とその「真相」には釈然としないものを感じてしまう。はっきり言えば、物足りない。
しかし、その一方で読後にこんなにも爽やかさを感じるのは、既に述べたとおり「神谷」の成長を喜べているからだろう。
【目次】
検証捜査
第一部 一時帰還
第二部 チーム
第三部 タレコミ
第四部 撤収の日
第五部 逆襲の朝
第六部 裏切り
解説 田口俊樹
- 感想投稿日 : 2014年5月5日
- 読了日 : 2014年5月5日
- 本棚登録日 : 2014年5月5日
みんなの感想をみる