勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (2020年3月10日発売)
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本棚登録 : 496
感想 : 38
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一言で言うと言語を使って他者と上手く距離を取る方法を書いた本。

私はプログラマーだ。
つまりコンピュータがわかるほど厳密で、常に一意な結果を返す文章を書く職業と言える。
一方この本では「背骨に音色を尋ねる」のような、一般的でない単語の使い方をした文章が例示される。
これを見て、自分がいかに文学的な表現と隔たりのある人生を歩んできたかを実感させられた。

一方でこのような『ボケ』はプログラミングの世界にはないのかというと、そうではないとは思う。
ある種の正しいコードの書き方が『環境のコード』として存在し、無批判にそれにノってるのがほとんどだ。
たまに批判的な概念が新たに生まれ、人々はモダンと言いながらそれにノり変えてるだけとも言える。
無批判にノってる限り『ITの世界は変化が早く勉強が大変』となっていくのだろう。

また有限性の話も日常の感覚と近く、自分が『諦め』と捉えているものだった。
プログラマーはものを作る仕事だが、『Googleのベストプラクティス』など情報を追い続けると永遠に何か足りないと感じ完成しない。
どこかで「動いたからオッケ!」と思える諦めが必要になる。

『享楽的こだわり』『決断主義』など普段ふんわり感じてることが言語化されて読後は視界がくっきりする感覚を覚える本だった。
最近は全くアウトプットをしていなかったので、久々に「書きながら考える」ことで思考をまとめていきたいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 思想
感想投稿日 : 2021年8月28日
読了日 : 2021年8月28日
本棚登録日 : 2021年8月28日

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