お金をふやす本当の常識: シンプルで正しい30のルール

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2005年10月1日発売)
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世の中に出回っているお金の情報は、必ずしもすべてが正しいとは言えません。
なぜなら、伝える側が正しく理解していないことと、マネー運用に関する情報は運用ビジネス側に有利が情報が伝わりやすいからです。

そこで、何が正しいかを私達が判断しなければならないのですが、著者は主として、リターン、リスク、手数料の関係から、その判断基準ををわかりやすく説明してくれています。
例えば、「長期投資でもリスクは減らない」という項では、「長期投資すればリスクは縮小する」という常識は本当なのか、について解説されています。
リスクが縮小するというのは、「年率」という言葉に誤魔化されているだけで、投資家の損失が少なくなるわけではないということです。
例えば、
投資金額 100万円の場合
 「1年で年率▲40%」の場合 100万×▲0.4=▲40万円
 
 「4年で年率▲20%」の場合、
   1年後に100万×▲0.2=▲20万円
  2年後に(100万-20万)×▲0.2=▲16万円
  3年後に(80万-16万)×▲0.2=▲12.8万円
  4年後に(64万-12.8万)×▲0.2=▲10.24万円
                 合計 ▲59.04万円の損失

となり、結局は、投資家の損失は長期投資のほうが大きくなります。
ただし、現実の投資の世界では、投資期間が長いほど、リスクもリターンもともに大きくなるので、リターンがプラスであれば、リターンの平均値も投資期間とともに伸びる、ということだけのことです。
考えてみれば当然のことですが、こうして実際金額を示されると、私も長期保有が有利だという思い込みのもと、下がり続けた投資信託を長期間保有した経験があるので、計算もせず思い込みだけで投資することの怖さをあらためて思い知らされました。

REITの項では、不動産投資のリスクは非常に高いことがわかります。
例えば4000万円のマンションであれば、3割程度は業者の利益なので、経済価値は2800万円程度です。
つまりこれをローンで買ったとすれば、バランスシートの資産側に2800万、負債側は2割大きく評価されるとして長期負債4800万となり、
差し引き2000万円ものマイナス効果が、自己資本に対して生まれるということになります。それだけリスクが高いということです。
にもかかわらずREITで、3~4%の配当利回りを出しているファンドが多いのは、成功例を作るために、わざと収益率の高い不動産を組み込んでいる可能性もあるということです。
収益率の高い不動産なら、不動産会社自身が持ちたいでしょうし、売却しても高く売れるはずなので、これをREITに組み込んでいることがおかしいといえます。
されに不動産市場は、株式市場ほど透明ではありません。
やはり、バランスシートでリスクとリターンを考えると、その投資リスクが大きいことに納得させられます。

その他、ドルコスト平均法、外貨投資、生命保険、返済、株の予想、ポートフォリオなど、具体的に非常に噛み砕いて解説してくれています。
文庫サイズで持ち運びもしやすいので、通勤の合間の読書にも最適です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: お金に対する考え方
感想投稿日 : 2010年12月19日
読了日 : 2010年12月19日
本棚登録日 : 2010年12月19日

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