イノベーション破壊と共鳴

著者 :
  • エヌティティ出版 (2006年2月1日発売)
3.27
  • (2)
  • (2)
  • (10)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 51
感想 : 6
3

(S)
 イノベーションの分類として「パラダイム破壊型」を提唱。
 クリステンセンが提唱した「持続型イノベーション」「破壊型イノベーション」という対となる概念に対して、「パラダイム破壊型」と「パラダイム持続型」という対を筆者は提案する。
 「パラダイム」とは、製品が基づく科学・技術分野の事で、真空管からトランジスタへの変化を振り返ると分かりやすい。真空管の増幅原理は、古典的な電磁気学によって科学的に明快になっているし、それを製品化する技術もある。それに対してトランジスタは、従来の古典電磁気学では説明することができない現象が起こる。そこには「量子力学」という新たなパラダイムが必要になる。

 パラダイム破壊型という考え方はユニークであるものの、本書に対してふたつの疑問点が残っている
1. クリステンセンのいう破壊型イノベーションを極端に狭く捉えている
2. 科学・技術に偏重しすぎていて、その他の要素がイノベーションにどう関わるのかが分からない

 「イノベーションのジレンマ」の詳細までは忘れてしまったが、クリステンセンは「性能」だけにフォーカスして「破壊」や「持続」を語っていただろうか?性能だけでなく、コストなどの観点も入っていたと記憶するがどうだろう。仮に自分の記憶が正しいとするならば、本書でしている主張を補完するためにクリステンセンを持ち出すのは適当ではない。(クリステンセンを引き合いに出したのは出版社の意図が大きそうな気もしているが)

 また、イノベーションを成り立たせる要素が科学・技術に偏りすぎていて、そんな小難しいことに基づかないイノベーション(例えば iPodやWii)をどう説明づけるのだろうか?そのへんがなんだか良く分からない。
 イノベーションを「技術革新」という字面どおりに捉えれば、科学や技術だけでいいのかもしれないが、自分の「イノベーション」の大きさ感とは少し違うので、違和感が残る。

 内容はまぁまぁだけど、これで2600円は高い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経営
感想投稿日 : 2010年6月23日
読了日 : 2010年6月23日
本棚登録日 : 2010年6月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする