恋するソマリア

著者 :
  • 集英社 (2015年1月26日発売)
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「恋するソマリア」
なんと思わせぶりなそそられるタイトルだろう
前回のブータンに続き、高野さんと一緒に旅して、そこまで高野さんがソマリアに恋い焦がれる訳が知りたいなと思い手に取った

期待を裏切らないおもしろさと度肝をぬかれる事件?事故?にも遭遇、やはりこの人は一筋縄ではいかないノンフィクションライターだった

ソマリアは、アフリカの東部、サイの角のように突き出た通称アフリカの角と呼ばれる広大な土地にある国だが、ソマリアとして存在したのは1991年までで、この本が書かれた頃は国際的には認められていないが、独自に内戦を終結させ民主主義を達成した「ソマリランド」、海賊が猛威を振るう「プントランド」、イスラム過激派のアル・シャバーブと暫定政府軍との戦闘が続く「南部ソマリア」の三国に分かれている

それぞれのお国事情のあまりの違いは、かつて同じ国だったとは思えないくらい

ソマリ人の素の姿が知りたい、ソマリに自分のことを認めてもらいたいの一心でグイグイと厚かましいばかりに現地の人に食い下がっていく根性、その甲斐あってか普通ではあり得ないことが次々実現する

その国を知るには、その国の家庭料理を知ることがモットーの高野さん、何とか若い女性二人に家庭料理を教えてもらったのはいいけれど、「結婚して日本に連れて行って」とせがまれる羽目に
親族以外の男性の前では絶対頭の布をとらないソマリ女子が高野さんの前では布をかぶらず、綺麗に編み込まれた素髪を見せる
テレビの音楽に合わせて踊り出し、「ビデオを撮って」と言い出す始末、イスラム教徒とは思えない若い女性の奔放さに笑えた

旅も終わりにさしかかり、南ソマリアを訪ねた際、高野さんが乗っていたアミソム(アフリカ連合軍) の装甲車がイスラム過激派アル・ジャバーブの襲撃に遭い、命を落とす羽目にもなりかねなかったこと

所変われば、品変わるの話の数々の中で、一番興味深かったのは、「カート」
はじめ、何かを運ぶ車かなと思ったら、何と和名アラビアチャノキという木の葉っぱ
この若葉を生でバリバリ食べるとやがて清々しい気分になり、周りの人全てが自分の愛しい人と思えるらしい
酒やタバコの類なのかなと思うが、一人ではやらず、誰かの家やたまり場などでやり、マフラーシユというカート宴会場まである
これをやると、ひどい便秘になるので、ラクダのミルクが欠かせないというおまけつき
便秘に苦しむ様子も気の毒だが、大爆笑!

大の大人が輪になって、葉っぱをちぎってバリバリ食べているなんて日本では考えられない!

物語の世界が大好きで小説を読むことが多かったが、ノンフィクションのおもしろさを実感した
日本から遠く離れた国で、たくましく生きる人々の息遣いが感じ
られた

アフリカの国々のことなど何も分かってなかったなと思い知らされた




読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年10月12日
読了日 : 2019年10月12日
本棚登録日 : 2019年10月10日

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