夜が暗いとはかぎらない

著者 :
  • ポプラ社 (2019年4月11日発売)
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本棚登録 : 2028
感想 : 190
5

この読後感をどんな言葉で表現したらいいのだろう?
難しい! 私のボキャブラリーでは、表現できない
しみじみ? かな? ちょっと違うような
身体の隅々にまで何かが行き渡り、染み込んでいくような・・・
身体の底から何かがふつふつと湧き上がっていくような・・・

大阪の暁町あかつきマーケットを中心としたその界隈に住む人々の何気ない日常の物語
しかし、それは暁町だけではなく、私が住むこの町、近所の物語でもある

人の心は、悪気のない何気ない言葉で簡単に傷つく
言った言葉は水に刻まれ、言われた言葉は岩に刻みつけられるとかいう格言があるが、確かに言った本人は、言ったことすら覚えていないのに、言われた本人は、心に棘が刺さったようにいつまでも痛めつけられる

でも、反面、人はまた、言葉で慰められ、癒され、微かな希望の光を見出し、立ち上がる勇気を与えられることもある

人を傷つけるのではなく、人に僅かでも温かさを届けられるような言葉を発する人間になりたい

いつまでも心にとどめておきたい言葉がいくつもあった

☆運動会ってなんで万国旗なんだろうね
世界にいろんな国があるみたいにいろんな子がいますってことなんじゃない

☆ねえ、君もあんなふうに、生まれてきたんだろ。君が生まれてきたことに震えるほどの幸福を感じた誰かが、どこかにちゃんといるはずなんだよ。もし実際に居なくったって関係ない。
生まれてきた、それだけでもう君はそう思われるに値する存在なんだから

☆みれの未来も、心も身体も時間も全部、自分のもの。他人の期待に応えるために生まれてきたわけやない。他人に渡したらあかん

☆二十歳を過ぎたら、早く結婚しなきゃね。結婚したら早く子供を産まなきゃね。産んだら、二人目はまだ? 男の子を産んだのなら、次は女の子ね。一人っ子はかわいそうだもん。
すごろくに似ている、と思っていた。この世に生まれでたら最後、さいころを振り続けて前に進まなくてはならない。だけど、このすごろくにはあがりがない。いつまでも、いつまでも誰かに何かを言われ続けることには、終わりがない
すごろくなんてくそくらえや

☆「ずっと」は、はじめからそこに存在するわけじゃない。一瞬一瞬を積み重ねて作っていくものなのだ

☆死んだ人間は、天国にもどこにも行かん。死んだら小さい、たくさんのかけらになって散らばって、たくさんの人間に吸収される。生きてる人間の一部になる。とどまり続ける

☆雨と一緒に音がふってくる。まさしく、ふってくる、という感じで聞こえてくる。音は目に見えないけれども、隣家のピアノの音を聞くとわたしはいつも色とりどりののドロップを連想する。レモンにいちご、メロンに薄荷。ドロップを集めて、細かく砕いて高いところからふりまいたら、きっときらきら光る。
高いところからふってくるきらきらしたおと。あのピアノの音は、舐めたらきっと甘くて、おいしい

たくさんの野菜をグツグツ煮込んだあったかいスープが飲みたくなった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年11月10日
読了日 : 2019年11月9日
本棚登録日 : 2019年11月8日

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