「ひと」の柏木聖輔といい、この本の主人公の井川幹太といい、
決して、順調に人生が進んでいるわけではないんだけれど、ジタバタしたり、ガツガツすることもなく、誰かを恨んだり妬むこともなく淡々と日常を営んでいる
何とバランス感覚のとれた人物なんだろう
2度も会社を辞め、コンビニと結婚式の代理出席のバイトを掛け持ちする27歳の主人公、井川幹太
親から見れば、27にもなってと小言の一つも言いたくなるのだけど・・・
大事件が起こるわけでもなく、アパートの住人やバイト先のおばちゃんとのやりとり、高校2年で同じクラスだった女友だちとの再会など、ごく普通の日常が淡々と語られていくのだが、それがとてもいい
そして、その中で語られる言葉の端々に真実が隠されていたりする
「やりたいことが特別なことである必要はないんだよなあ、そうなるわけないよなあって・・・」
「それは要するに、やりたいことがないのはダメだと思ってたってことなのよね。やりたいことが何もない自分はダメだと思っちゃうっていう。で、それは要するに、人から見て、特別なことをやりたいと思ってなきゃダメだってことなの」
「でも、あのお芝居を観て、そうじゃなくていいのかもって思った。勝手に。少し、気が楽になったよ」
「生きてさえいれば、人は何者でもあります」
「人一人にできることは限られているから、仕事をするうえで大事なのは大きなものを見過ぎないこと」
小野寺作品、まだ三作しか読んでいないけれど終わり方が絶妙!
からりと晴れた日に、窓を開け放つと、明るい光と爽やかな風が入り込んでくるような感じ
いい一日が始まりそうだなという予感を感じさせてくれるような
感じ
静かなふわっと包まれたような心地よい読後感がたまらない
- 感想投稿日 : 2019年8月5日
- 読了日 : 2019年8月5日
- 本棚登録日 : 2019年8月4日
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