ライフ

著者 :
  • ポプラ社 (2019年5月28日発売)
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本棚登録 : 1239
感想 : 163
5

「ひと」の柏木聖輔といい、この本の主人公の井川幹太といい、
決して、順調に人生が進んでいるわけではないんだけれど、ジタバタしたり、ガツガツすることもなく、誰かを恨んだり妬むこともなく淡々と日常を営んでいる
何とバランス感覚のとれた人物なんだろう

2度も会社を辞め、コンビニと結婚式の代理出席のバイトを掛け持ちする27歳の主人公、井川幹太
親から見れば、27にもなってと小言の一つも言いたくなるのだけど・・・

大事件が起こるわけでもなく、アパートの住人やバイト先のおばちゃんとのやりとり、高校2年で同じクラスだった女友だちとの再会など、ごく普通の日常が淡々と語られていくのだが、それがとてもいい

そして、その中で語られる言葉の端々に真実が隠されていたりする

「やりたいことが特別なことである必要はないんだよなあ、そうなるわけないよなあって・・・」
「それは要するに、やりたいことがないのはダメだと思ってたってことなのよね。やりたいことが何もない自分はダメだと思っちゃうっていう。で、それは要するに、人から見て、特別なことをやりたいと思ってなきゃダメだってことなの」
「でも、あのお芝居を観て、そうじゃなくていいのかもって思った。勝手に。少し、気が楽になったよ」

「生きてさえいれば、人は何者でもあります」

「人一人にできることは限られているから、仕事をするうえで大事なのは大きなものを見過ぎないこと」

小野寺作品、まだ三作しか読んでいないけれど終わり方が絶妙!
からりと晴れた日に、窓を開け放つと、明るい光と爽やかな風が入り込んでくるような感じ
いい一日が始まりそうだなという予感を感じさせてくれるような
感じ
静かなふわっと包まれたような心地よい読後感がたまらない

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年8月5日
読了日 : 2019年8月5日
本棚登録日 : 2019年8月4日

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