江戸の町を襲う度重なる大火や長雨、流行り病
疲弊した人々の心を何とか元気づけようと知恵をしぼる五鈴屋
その五鈴屋を痛めつけるための音羽屋忠兵衛と結夫婦の悪巧みの数々
姉妹といえども一旦憎しみを持つとそこまでできるのかと気分が悪くなるが、それならばと堂々と迎え撃つ幸
「この世には、神仏の定めた『則』がある。己のためだけ、我欲だけの者は、天下が取れたところで、一時のこと。自利のみでない利他、惜しみのう分け合うた者の方が、結局は残りますのや」
まあ気張りなはれ、と励ます菊次郎の言葉が胸に沁みる
両面糊置きの技、藍染め浴衣に『火の用心』を願った拍子木の図柄、買い占めと悪天候のため、不足する白生地の融通の付け合い、四股名と手形を染めた力士の浴衣等
次々と画期的なアイデアを考え出す五鈴屋だが、その技を決して独り占めすることなく、浅草太物仲間の共有の財産とした幸
全ては『のちの世に伝えられるものに育てたい』という
お家さんから受け継いだ信念によるものだ
自利を考えないあまりの遠大な志に言葉が出ない
日常生活に相通じる大切なことに気付かされた思いがする
歌舞伎の千秋楽で、富五郎と吉次が菊栄の考え出した簪をつけ娘道成寺を舞うため登場した場面、
勧進相撲の後、男衆が競って自分のご贔屓の力士の浴衣を求めに浅草太物仲間の店を訪れる最後の場面など
感動で目頭が熱くなった
「幸が賢輔を見つめる目が・・・」
と気になる表現があった
二人の行く末も見届けたい
まだまだこのシリーズ目が離せない
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年9月22日
- 読了日 : 2021年9月22日
- 本棚登録日 : 2021年9月21日
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