チューリップ

著者 :
  • 小学館 (2017年10月23日発売)
4.06
  • (21)
  • (26)
  • (14)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 406
感想 : 22
4

“あか きいろ むらさき。
はるに きれいにさく チューリップ。

あきになったら チューリップの きゅうこんを うえましょう。
つめたい ふゆを つちのなかで すごして はる、めを だします。

つちのなかで、きゅうこんは、どうなっているのでしょうか?”


チューリップが、球根から土の中で寒い冬を経て、春に可憐な花を咲かせ、土の中で新しい球根を作り出し、そしてまた次の秋を迎えるまでを、繊細な筆致で丁寧に描いた科学絵本。
巻末に作者の言葉で、「チューリップの球根を植えてみませんか?」とあり、実際に自分でもチューリップを育ててみたくなる。

種で増やす植物よりもさらに育ち方がわかりにくい(と私は思う)球根の育ち方、育て方が丁寧に描かれており、大人でも意外と知らないもので勉強になる。(私が知らないだけかもしれない。)
そういえば、球根を切った断面などおそらく見たことがなかったし、土の中で栗が大量に白鬚を生やしていくような根の成長の仕方も面白い。栗の仙人みたい!
「球根は冬の寒さに当たらないと春に芽を出すことが出来ないのです。」
桜の蕾などもそうだろうから当たり前っちゃ当たり前のことかもしれないけれど、改めて言われると、おお―そうなのかーと妙に感心してしまった。
土の中の断面図で、芽が伸びていく姿が見られるのが面白い。地上の部分は自分でも見られる機会が多いけれど、地下部分の更に断面図は、そうそう見られるもんじゃないから。
チューリップの花は、朝開いて夜閉じるのね。寒い日や雨の日は、ずっと閉じているのね。
花が最盛期を迎えた後、地下では今までの球根は力を使い果たし、新しい球根を育てている。それは、葉っぱの仕事だ。花にばかりフォーカスしがちだけど、葉っぱってとっても大事!
作られた球根は葉がすっかり枯れたら掘り出し、夏の間は涼しくて暗いところにしまっておくそうです。その間も、球根の中では新しい目が育ち続けています。
そしてまた秋になったら…。

色々勉強になりました。そしてまんまと植えてみたくなりました。
ところで、うちにもチューリップが植わっているのですが、「植わっている」と表現したように、ずーっと植わりっぱなし、花が終わっても掘り起こしもせず、放ったらかしです。それでも、チューリップくんは毎年律儀に咲いてくれています。掘り起こさなくてもいいのかしらん??
そして、種子植物に対して、球根の植物ってなんなの??と思ったので調べてみたのですが、球根の植物も種子植物なのですね。チューリップにもちゃんと種子があって、球根は、種子の状態から6年位育てたものだそうです。種から育てると開花までにとても時間がかかるので、球根の状態で出回っているそうです。知らなかったー。皆さんは御存知でしたか?

大人になるまでにスルーしてしまったもの、あるいは忘れてしまったものを教えてくれる優しい科学絵本たちなのでした。

繊細な筆致で植物を描く、『ひまわり』や『たんぽぽ』などもある荒井真紀さんですが、駒澤大学仏教学部禅学科卒業だそうで、面白い経歴だなぁ。
1984年 第1回国立科学博物館主催ボタニカルアート展佳作に入選だそうで、ボタニカルアートという言葉に、一連の作者の作風に共通したものを見いだせて、妙にしっくり来たのでした。ボタニカルアートと言えば、私は牧野富太郎先生が思い浮かびます。素敵ですね。

ちなみに読み聞かせは約6分。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2020年7月12日
読了日 : 2020年7月12日
本棚登録日 : 2020年5月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする