妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街 (光文社文庫 う 18-3)

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  • 光文社 (2014年7月10日発売)
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妖怪が跋扈する<真朱の街>で探偵事務所を営む妖怪・百目は絶世の美女。ある事情からこの街に逃げ込んできた相良は、自身が巻き込まれた事件を契機に、依頼報酬は人の寿命という百目に時折命を吸われながらも探偵助手を務めている。

人と妖怪、呪いと最先端科学、自然の霊力とサイエンス・テクノロジーが融合した、魔除けの朱に染められ無数のお札を貼りこめた建物に囲まれたこの街は、かつては医療特区だった。その名残で、最先端医療技術の研究開発が行われていたりもする。
そんな街で、人と妖怪は奇妙な共存関係にあった。
勿論、悪い出会い方をすれば、喰われるのは人間なのだが。

そんな街で探偵家業を営む百目だが、人さえ喰えれば(文字通り肉体を貪るか、ちょっと優雅に寿命を吸うか)生きていける妖怪のこと、気が乗らない依頼は一切受けない。彼女が乗り出すのは、妖怪絡みの事件に限られる。

百目と相良が関わる五つの事件。
特に興味深く読んだのは第四話『炎風』。人が開発したヒューマノイド・ロボット<明日香>に恋をした妖怪かまいたち<風鎌>が、消えてしまった恋人の捜索を依頼してくる。
人ならざる者同士ながら、かたや古来の妖魔、かたや先端科学の申し子。人の心の奥底までも覗き込む百目が見出す、かれらの恋の行方とは。

相容れない存在同士が喰いつ喰われつしつつも、それぞれに滅びてしまわぬよう、ぎりぎりのラインで共存する<真朱の街>(それでも、人は呪力や科学力を駆使して妖怪を排除する道を諦めてはいないし、妖怪も隙あらば人を喰うけど)に生きながら、人であることをやめ妖怪側にたつのか、それとも人の世界へ立ち戻るのか、揺れ動く相良。
妖怪も妖怪で、人の科学技術を便利に使っていたり(百目なぞ、全身の目を隠すために人工皮膚を使っている)もするのが面白い。
余談だが、妖怪の跋扈するこの街で、相良が通う妖怪酒場のマスター・牛鬼が提供する"人間用おつまみ"は結構おいしそうである。
続刊が待ち遠しいシリーズとなった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2014年10月25日
読了日 : 2014年10月24日
本棚登録日 : 2014年10月25日

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