あげくの果てのカノン。
「挙句の果て」:結果、結局。 紆余曲折を経て、その結果。 あまり好ましくない結果に至った場合に用いることが多い。(Weblio辞書より)
タイトル通りの終わり方だと思った。
重くて可哀想で不快な部分もある。なのに奇麗で、一気に読んでしまった。
五巻まで通して読んで、この話に出てくる人たちは割とみんな、勝手だと思う。
勝手に先輩に一途な想いを抱くかのん、妻がいるのに勝手に他の女にはしる境先輩、先輩の心情も知らず勝手に理想を押し付ける初穂さん。旦那や家族の都合をあまり考えずにかのんを引き取る母親、息子とずっと一緒だと勝手に言う先輩の母親、かつて勝手に自分の恋愛話を押し付けたのに今になって(タイミングと運が悪かったとはいえ)拒むマリ、勝手に先輩をヒーロー視する民衆たち。
みんな、とても勝手に生きている。それは現実世界とよく似ている。なにも思い通りにはならないのが、リアルで逆にいい。
そんな勝手な人たちは、時の流れとともに態度や思考が変わって、過ぎていく。
でも、かのんの先輩への熱量だけは、初めから終わりまで変わらない。それが恋愛ではないことには、本人も気づいている。どちらかというと、両親が死んで暗闇を這っていた頃に、たまたま目にした光が先輩だっただけなのだ。
恋や愛でなくても、推しでも信仰でもなんでも、先輩がいたから多分彼女は今日まで生きてきた。
なら、そんな彼女にとっては、結末はハッピーエンドなんだろう。
ずっと求めていた人が目の前に再び現れて、ドラマティックに自分を思い出して名前を呼んでくれる。それだけで多分、とびっきりのハッピーエンドだ。
……もちろん先輩とハッピーエンドを迎えたとしても、この先の道が安パイなわけもない。先輩がゼリーの影響がすごかった的場さんみたいになる可能性や、再びゼリーの出現で呼び戻される可能性もある。周りからの視線、家族の感情、きっとまた苦しむこともある。それでもそんなものに負けず"勝手に"生きていってほしい。私はなんとなくそう願う。
余談ですが、弟くんも最後の最後に勝手だったなぁ。個人的に松木平くんは好きです。この作品の中ではマトモだったなぁ。
また忘れた頃に読み返して、気持ち悪くなりながら感動したい漫画です。
- 感想投稿日 : 2021年4月23日
- 読了日 : 2021年4月23日
- 本棚登録日 : 2021年4月23日
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