ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ

著者 :
  • 新潮社 (2012年1月31日発売)
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本棚登録 : 252
感想 : 35
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時には数ページにも及ぶ長い文章だけれど、句読点がメトロノームのようにリズムよくかっちり打ってあるので流れるように楽しく読み進めるられた。しかし「私」がいつのまにか「わたし」「あたし」「僕」となり誰の話だか見事に迷う。思えば小さい頃は身近な人々と自分の境界など無かったなぁなどどふと思い出した。マッチ入れの陶器、貝殻のような耳に飾られる涙型の翡翠、ミモザのワンピース、結婚式に仕立てられたドレス、細部が緻密に執拗に描かれる。子どもの頃物を本当によく見ていた事もまた思い出された。父親不在の家庭だけれどやがて父親は手紙により姿を見せ、私の私生活や、隣りの若い旦那さんのエピソードと対になり重なっていく。同じモチーフの話を繰り返し変えながら語る事で、自分の記憶も時とともに色々書き直されている事に気がつく。やがてここに語られた話と、自分の記憶もどこかつながっている気持ちになった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年11月8日
読了日 : 2014年11月8日
本棚登録日 : 2014年11月8日

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