記号論への招待 (岩波新書 黄版 258)

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  • 岩波書店 (1984年3月21日発売)
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記号論についての基礎的概念を紹介している本

記号論的なものの見方を久しぶりに確認したが、とてもよくわかるようになっていた。

先に読んだ「言語学講義」の方には、ソシュールが創始した重要概念が記載されている。
・ラング、ランガージュ、パロール
・(言語記号の)恣意性、線条性、能記と所記、範列関係と統辞関係、通時態と共時態

本書では、それを補っていくためのキーワードがさらに様々説明されている。
・記号表現(シニフィアン)=知覚可能と記号内容(シニフィエ)=知覚不能:相互依存と非対称性

・センス sense 感覚であり意味である

・分節と等質性と差異作用。これを規定するのがコード。コードがどのような視点から分節を行うかの動機付けがはっきりしているかどうか二次的。本来、分節は恣意的

・イーミック(コード想定あり)=構造相的=音韻論的 phonemic とエティック(コード想定なし)=非構造相的 音声学的phonetic
 -音素を中心に組み立てる音韻論:異なる音がその問題となる言語で「同じ」価値をもつかどうかという視点
 -言語音の調音的、音響的特徴そのものを考える音声学

・記号表現:
ー実現された段階では、受信者によってそれと感知されるようなものであることが必要
ー受信者が人間であれば、典型的には視覚、聴覚、嗅覚、味覚、熱感覚、触覚、などといった感覚に訴えるもの
―受信者が機械であれば、可能な記号表現の様態は広くなる。知覚可能な範囲外の光線、音波、電流、ある種の化学物質から磁力まで
・二重分節:文と語、語と音。一般的には、記号と記号素

・記号内容:
ー指示物か意味か。例:金星と「明けの明星」「宵いの明星」
ー記号表現と指示物:有契・無契(動機付けがあるかないか)。有契の場合の、イコン(類像)、インデックス(指標)、無契の場合の、シンボル(象徴)

・示差的特徴、対立(共通性を踏まえての差異)と中和(予想されている対立が停止している状態)
・有徴・無徴(対立が中和された項と予想される対立を保持した項の2項):man woman のうち、man が無徴、woman が有徴
・表示義(デノテーション)rose ばら・共通義(コノテーション)rose 愛

・統辞論:記号がどのような形で配列されてよいか
・意味論:個々の記号において成立する意味作用

・基底部規則:基本的な文型を作り出す一連の統辞規則
・変形規則:さらにさまざまな文型を派生する一連の統辞規則

・記号体系が「固有」の統辞規則を持っているということは、それにしたがって記号が配列されることにより、「外界」とは自立した「嘘の世界」を作りだすことができる。
―〈モノ〉的レベル
―〈モノ〉的なものによって構成される〈コト〉的なもの、〈コト〉的なものによって構成されるもっと複合的な〈コト〉的なレベル
―〈モノ〉的レベル

・統辞は時間の流れに沿う(線条性):言語、音楽、
・空間的な配置による統辞:地図、写真、絵画

・コード:辞書と文法

・範列的(パラグマティック)JOHN SEE DOG と統辞的(シンタグマティック)JOHN BILL MARY、SEE HEAR TOUCH、 DOG CAT RAT
・文法と辞書の関係:意味的選択制限、イディオム

・統辞的単位とテクスト
・ミクロ的整合性
ー相前後する統辞的単位の間のつながりとは、「部分的に同一の情報の反復」:
ーテクスト統辞的役割:接続詞、時制(過去、現在、未来)、法(現実と非現実)、相(開始、進行中、終了)
・マクロ的整合性
ーテクスト生産者の主体的判断に任せる
ートピック+展開+結論
ー叙述+矛盾的叙
ー「悪事+計略+処罰
ー起承転結
ー序破急

・主体によるテクストの補完:コンテクスト

・フレームとスキーマ
ーフレーム:関係する人々が平均的に有していると思われる知識を総覧的に示したもの。スロットとフィラー
―スキーマ:時間的ないし因果的な関係に基づいて継起する出来事からなるまとまりを表すのに用いられる

ということで、記号論のとらえかただが、
もっとも重要なのは、コミュニケーションモデルを組み立てるための道具として記号論を活用することではないかと考える。

ある伝達内容があるとして、発信者は、コードを参照しながら伝達内容を「記号化」してメッセージをつくる。メッセージは何らかの「経路」を通って受信者に届く。受信者、受け取ったメッセージを、コードを参照しながら「解読」して、伝達内容をメッセージとして再構成する。コードは、伝達において用いられる記号とその意味(辞書)、および記号の結合の仕方いついての規定(文法)である。

これが記号論的コミュニケーションのモデルだが、これを起点に様々コミュニケーションモデルを考えるというのが、自分の関心事といってよいので、ここからモデルをいかに発展させていくかが、自分なりの理論および教育サービスを提供していくかにつながるなら、それが最も重要な成果といえるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 言語 記号論
感想投稿日 : 2021年2月23日
読了日 : 2019年9月23日
本棚登録日 : 2019年9月23日

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