著者の岡野雄一さんは、漫画家、雑誌編集者、シンガーソングライター。ペコロス(西洋玉ねぎ)はペンネームで、自身の禿頭の自虐ネーミング。
描いていた漫画をまとめた自費出版本が話題となり、2012年に本書が西日本新聞社より出版され、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞しています。
ペコロスと認知症の母との日常を主とし、時々亡き父も登場します。二十歳で長崎を離れ、20年間東京で過ごした後また長崎へ‥。「ふるさとは遠きにありて思ふもの」ではないでしょうが、本コミックエッセイを読んでいると、かつて両親と過ごした故郷での〝陽だまり〟を掬い上げようとしている気がしてきます。
母はつい先ほどの事も忘れ、昔と現在の時間軸が曖昧で、人の識別も混同する状態です。日々起きることを、時に深く、時に温かく、時に哀しく、更に楽しくユーモラスに8コマ漫画で描き、静かな感動が胸に迫ってくる内容です。
ペコロスさんの母への愛ある接し方、そしてその優れた表現力ゆえ、失礼ながら「ボケるのも悪くないかも」と思えますが、介護する側の当事者にとっては深刻な問題が多々あるのは当然です。
在宅介護の困難や限界は必ずあるので、理想だけ語って悲劇を生むよりも、社会の制度・システムが進むこと、更には、本書が介護に携わる方々への癒しとなることを切に願います。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年7月20日
- 読了日 : 2023年7月20日
- 本棚登録日 : 2023年7月20日
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