冒頭からいきなり、主人公の遼賀・33歳が癌を宣告され、物語が始まります。
病や死に対しては無防備な年代ですが、単なる闘病もの、重い話、感動ものと片付けられない遼賀の生き様、その清廉さに心洗われる思いがしました。とてもいい話でした。
誰の人生にも起こり得る想定外な病は理不尽ですが、現実を受け入れ前に進む覚悟を決めた遼賀。彼の、人に対しても自分の人生に対しても誠実に生きる姿は、読み手の魂を揺さぶります。
遼賀の同級生で看護師の泉、同僚でアルバイトの高那、弟の恭平、母や祖母など、遼賀の闘病を支える人たちの過去も明かされながら、それぞれが自分や仕事との向き合い方を見直し、遼賀との絆を深めていきます。
遼賀もメンタルが強固なわけでもなく、悩み、落ち込み、狼狽えます。しかし、周囲と共に生かし生かされていることに気付き、(諦めの境地ではなく)優しさ・目標を取り戻していきます。
そんな遼賀の姿を追ううちに、もしかしたら自分も厳しい状況下で、変われるのかなと思えました。読み手だけでなく、登場人物皆が明日への希望をもらえた気がします。
登山靴、実家や店舗に植えられた蜜柑、夕陽に染まる故郷の山‥、それらが放つ暖色のオレンジが、印象的な愛あふれる物語でした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年11月7日
- 読了日 : 2023年11月7日
- 本棚登録日 : 2023年11月7日
みんなの感想をみる
コメント 5件
Manideさんのコメント
2023/11/08
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/11/08
Manideさんのコメント
2023/11/08
ゆーき本さんのコメント
2023/11/19
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/11/19