きのうのオレンジ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2023年8月21日発売)
4.23
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本棚登録 : 1083
感想 : 87
5

 冒頭からいきなり、主人公の遼賀・33歳が癌を宣告され、物語が始まります。
 病や死に対しては無防備な年代ですが、単なる闘病もの、重い話、感動ものと片付けられない遼賀の生き様、その清廉さに心洗われる思いがしました。とてもいい話でした。

 誰の人生にも起こり得る想定外な病は理不尽ですが、現実を受け入れ前に進む覚悟を決めた遼賀。彼の、人に対しても自分の人生に対しても誠実に生きる姿は、読み手の魂を揺さぶります。

 遼賀の同級生で看護師の泉、同僚でアルバイトの高那、弟の恭平、母や祖母など、遼賀の闘病を支える人たちの過去も明かされながら、それぞれが自分や仕事との向き合い方を見直し、遼賀との絆を深めていきます。

 遼賀もメンタルが強固なわけでもなく、悩み、落ち込み、狼狽えます。しかし、周囲と共に生かし生かされていることに気付き、(諦めの境地ではなく)優しさ・目標を取り戻していきます。
 そんな遼賀の姿を追ううちに、もしかしたら自分も厳しい状況下で、変われるのかなと思えました。読み手だけでなく、登場人物皆が明日への希望をもらえた気がします。

 登山靴、実家や店舗に植えられた蜜柑、夕陽に染まる故郷の山‥、それらが放つ暖色のオレンジが、印象的な愛あふれる物語でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年11月7日
読了日 : 2023年11月7日
本棚登録日 : 2023年11月7日

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コメント 5件

Manideさんのコメント
2023/11/08

手紙に続いて、この作品も悲しいですよね。

感想見ながら、連続で昔読んだ作品のことを、思い出してしまいました。

幸せをしっかりと感じて、日々を大切に生きていかないといけないですね。

NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/11/08

Manideさん、こんばんは♪
たくさんの「いいね」& コメントありがとうございます!
自分の名前、めんどくさいので最近「本とコ」で通してます。哀しいのも笑えるのも、何でも好きです。
本は人生の縮図、我が師! なんちゃって(^^)

Manideさんのコメント
2023/11/08

「本とコ」なんですね、覚えておきます(^^)

そうですよね〜
本はいいですよね。
いろんな感情を持つことができることが、私は好きです。

哀しみはそんなに味わいたくはないですが…

ゆーき本さんのコメント
2023/11/19

遼賀が遭難した山で両親宛に書いた手紙がもうダメでした(泣)わたしだったら遼賀のように強く生きられないなぁと遼賀の姿に胸を打たれました。

NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/11/19

ゆーき本さん、コメントありがとうございます!
全くタイプは別ですが、ある意味では『山の教場』?
本から教えられること多いです‥。

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