本作は、多面・多角的な議論対象をもつ衝撃作だと思います。試合開始から(何の?)顔面パンチを喰らい、ボディーブローがじわじわ効いてきて、フラフラしながら1Rを耐えるもTKO負け、という感じです。
著者の市川沙央さんは、自らも重度障がい者だそうです。作中の主人公・井沢釈華と重なる部分もあるのでしょうか、当事者だからこそ知り得る描写が緻密でリアルです。そういう意味では、自分自身を投影した私小説とも読み取れるかもしれません。
健常であることや生き方や性について、考えを改め自省させられる部分が多かったです。特に本についての記述「紙の本を1冊読むたび、少しずつ背骨が潰れていく〜。紙の匂い、ページをめくる感触が好きなど、電子書籍を貶める健常者は呑気でいい」は強烈でした。
私自身も公然と「本は紙派です!」などと宣っていたのですから‥。
障がい者という観点でもLGBTと同様、多様性の尊重などと綺麗事の言葉が先走り、当事者以外の認識が追いついていない印象が強いと実感されます。
重度障がいを持つ人の厭世観、夢や願い、世の中との繋がり、健常者との関わり等を描きながら、障がい者が精神的にも身体的にも今ある能力等を最大限発揮し、社会に効果的に参加している姿は、著者の生きることへの執着と生きている証なのだと思えました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年7月18日
- 読了日 : 2023年7月18日
- 本棚登録日 : 2023年7月18日
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コメント 3件
ブラリーさんのコメント
2023/08/16
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/08/16
ブラリーさんのコメント
2023/08/17