3.11の津波で町民の約1割が犠牲になった岩手県大槌町。この地で、約9年間1人で『大槌新聞』を発行し、記事を書き続けた菊池由貴子さん。彼女の想いや原動力に関心をもち、読んでみました。
菊池さんは、新聞づくりのきっかけを「町民目線に立った情報の深刻で圧倒的な不足」と記していました。確かにその切実な想いがスタートだったのだと思いましたが、なぜ困難を乗り越えて続けられたかを考えると、背景に彼女の大病があるように思いました。強い覚悟さえ感じます。
菊池さんは、高2で網膜剥離、大学入学後の潰瘍性大腸炎、心筋炎による2度の心停止、7回の入退院と、壮絶な経験をし奇跡的に助かったのでした。
2度目の結婚をし、相手から「なぜそこまでやるのか」と問われた菊池さん。獣医師になる夢は潰えましたが、いや、だからこそ自分が見つけた"打ち込める事""人の役に立てる事"を手放す選択肢はなかったのでしょう。
『大槌新聞』は、2012.6.30に創刊し2021.3に第385号で終了するまで、週刊新聞(A4表裏)で希望者から始まり、月刊新聞(タブロイド判8ページ)で町内全戸約5100世帯へ無料配布を貫きました。この取組は、数多くの受賞歴をもつこととなります。
取材に最も心血を注いだのが、震災検証と旧役場庁舎保存・解体問題のようですが、厳しい内容に心が痛みます。
菊池さんは町外へ目線が広がり、新聞休刊後は語り部活動やオンライン勉強会の開催、雑誌への寄稿などに取り組んでいるようです。
本書で自虐的に述べている「負け組の人生」「勝手な使命感」は、無関心でいる私たちへの優しくも衝撃度の強い叱咤激励と受け止めました。
能登半島地震の被災者の方々へ、必要な情報と支援はしっかり届いているのでしょうか?
- 感想投稿日 : 2024年2月21日
- 読了日 : 2024年2月21日
- 本棚登録日 : 2024年2月20日
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