茨木のり子さんの詩集ですね。
永遠の詩シリーズです。
このシリーズはほんとうに、詩との出会いを形づくるきっかけを結びつけてくれますね。
茨木さんの詩は、初めて味わいましたが、私の心に深くすんなり、ほんとうにすんなり受け入れました。
詩集を読むのはかなりの想像力と理解力、感性を駆使しますが、茨木さんの詩は、飾りがなくそれでいて、真相を的確に捕らえられていて、情愛と励ましに溢れています。
みずうみ
《だいたいお母さんてものはさ
しいん
としたところがなくちゃいけないんだ》
名台詞を聴くものかな!
ふりかえると
お下げとお河童と
二つのランドセルがゆれてゆく
落葉の道
お母さんだけとはかぎらない
人間は誰でも心の底に
しいんと静かな湖をもつべきなのだ
田沢湖のように深く青い湖を
かくし持っているひとは
話すとわかる 二言 三言で
それこそ しいんと落ちついて
容易に増えも減りもしない自分の湖
さらさらと他人の降りてはゆけない魔の湖
教養や学歴とはなんの関係もないらしい
人間の魅力とは
たぶんその湖のあたりから
発する霧だ
早くもそのことに
気がついたらしい
小さな
二人の
娘たち
この詩集は、茨木のり子さんの全詩より三十六編を選び出されています。
選者の高橋順子さんの言葉
「言葉は平易であるが、最初から不思議なくらい洗練されていた。時々俗語や文語が混じり、それがじつに所を得て、いきいきと親しみやすい表情を浮かべているのが、茨木詩を読む楽しみの一つでもある。修飾をはらい、畳みかけるように強い言葉の中に、たおやかな言葉を見出すこともある。」
心に響く「言の葉」の詩集ですね。
- 感想投稿日 : 2023年2月4日
- 読了日 : 2023年2月4日
- 本棚登録日 : 2023年2月4日
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