弥吉の手紙が衝撃的だった。<戦争は、人間を人間でない別な動物に墜としこませる、恐ろしいものである>。そんな体験が、妻の娘が別の男との間で生まれていたことを<救い>だと感じさせる。それほどまでの狂気の中で生きた弥吉の精神の神聖さに人間の小ささと命の重みをみる。人間は正義の基準を自分とし、他者を批判しながら生きている。しかし、たとえ他者に明らかな過ちがあったとしても、他者を批判し、糾弾するだけの資格があるのか、まずは自分を顧みなければならない。そうすることで他者の過ちをも受け入れられるようになるのだろうか。
<ほうたいを巻いてやれないのなら、他人の傷にふれてはならない>を教訓として自分で自分に包帯をまくことを知っている順子の生き方に胸を打たれた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2022年4月13日
- 読了日 : 2022年4月13日
- 本棚登録日 : 2022年4月12日
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