認知心理学の知見を基礎にした、日本人が英語を習得する際に躓くスキーマの説明(可算/不可算、動作動詞と前置詞の組み合わせや意味の広がり)と、単語を理解し、覚えるために必要な意味ネットワークの構築や文脈・共起語・頻度の調べ方の具体的な紹介(コーパスの利用)が連関し、認知的負荷をかけながら、英語という言語の習得について理解することが出来る良書。認知心理学の言語習得の研究結果などを例に挙げながら、人がどのように言語を理解し、習得していくかを知ることもできる。
言語習得において子供(1歳まで)が有利なのは、音素(ex.rとl)の区別であるが、子供の頃に習得した言語は、その後磨き続けなければあくまでその当時の言語能力という限界があるため、むしろ、様々な知識を関連付けて推測を行う能力が高い大人になってから英語の習得に励むことは(リスニングやスピーキングはネイティブレベルになれないとしても)深い考えを適切な内容で伝えるというプロフェッショナルに必要な能力を身につけることにつながる、という内容に、励まされる。仮説を持ち、予測をして、それが裏切られたとき人は最もよく学ぶという。筆者が指摘する通り認知心理学の知見は、言語習得に限らず、あらゆる物事を身につける時に、選択と集中を行う認知プロセスを踏まえた適切なトレーニングを行うことを可能にする。英語のスキーマをざっくりと知ることができ、注意を向けられるようになったため、コーパスを利用しつつ、自らスキーマを発見する勉強をしたい。
これは余談だが、子どもが(子どもには難しい内容でも)大人の事情や心情に敏感なのは、言葉を理解できないことも多いからこそ、文脈、表情や他の言葉から推測をするという能力を、めいいっぱい使いながら生きているからだと感じる。
- 感想投稿日 : 2021年5月5日
- 読了日 : 2021年5月5日
- 本棚登録日 : 2021年5月5日
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