1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景

著者 :
  • 新曜社 (2009年7月1日発売)
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1968感想

1968年あたりに起きた、学生叛乱、大学闘争の本。
正直、私の世代だと、そんなことあったんかいなという感覚。

めちゃめちゃ厚かったので、読むのに苦労しました。。。

印象に残ったところを列挙していくと。
①膨大な文献、手記にあたっている点。
物語を読むような臨場感があると同時に、本来、歴史ってこうなんだよな、と思う。
(いろいろな思惑であったり、思いがあって組織や人が動いていく。教科書では、いつ、何が起こってとしか書いていないが。)
Wikiとか見る限り、文章資料にしか当たっていないことで、批判対象になっていたりもするそうですが。

②文章構成
序章や章のはじめで概要を知りたい人はこの章を飛ばしていいだとか書いてある。
その通りに読むと読みやすいのでありがたい。。

③「現代的不幸」から闘争をした学生たち。
東大闘争に代表されるように、
本当は大学の民主化闘争だったものが、「自己の確立」「真の大学のための闘争」といったように闘争の形が変質していく。
そして当時はメンタリティを形成させる土壌があった。
その土壌としては
・日本がまだ発展途上国であった高度成長前に幼少期を過ごしたベビーブーム世代が持つ根底の文化や性規範が、高度成長後のものとはおよそ異なるものだった。
・大学に進学した彼らが、マスプロ教育の実情に幻滅し、アイデンティティクライシスや生のリアリティの欠落に悩む。
何となく、分かるなとも思うし、もし自分がこの時代に大学生として生まれていたら、少なからず彼らに共感するんじゃないか。
何が不満なのか、言語化できないというのが、分かる。。

④闘争、組織の在り方
当初は、明確な目標を掲げていた組織。
→無関心層、参加者の減少、疲弊、暴力手段で本来の目的を見失う。
政治的妥協ができなくなる。
セクトと呼ばれる「新左翼」の集団の介入によってどんどん目的から離れていく。
確かに組織って、本来の目的を見失うと、意味の分からない方に走っていきがちだし、内部からも修正が効かなくなる。
大学闘争という限られた場ではあるが、組織の変質という意味では、注目に値する。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年11月29日
読了日 : 2021年11月29日
本棚登録日 : 2021年11月21日

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