鳩の撃退法 (下) (小学館文庫 さ 4-12)

著者 :
  • 小学館 (2018年1月4日発売)
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本棚登録 : 1779
感想 : 137
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⚫︎受け取ったメッセージ
のちに直木賞作家になる著者が描く、
元直木賞作家の作品内で起こった現実から生み出された、どこまで現実か虚構かわからないメタのメタ構造。

人は大なり小なり
現実の断片を繋ぎ合わせて
現実の世界を自分の都合のいいように切り取り、
繋げ、何かを信じ、それがその通りになったり、ならなかったりして一喜一憂する。

そこをエンタメ小説で書き上げる筆力に脱帽。


⚫︎あらすじ(本概要より転載)
―このままじゃおれたちはやばい、ラストに相当やばい場面が待っているかもしれない。だけど厳密にやばいのはあんただ。わからないか。夜汽車に乗って旅立つ時だよ。身を潜めて小説の下書きを進める津田伸一は、退職金をいきなり手渡された。ついに“あのひと”が現れたのか?忽然と姿を消した家族、郵便局員の失踪、うごめく裏社会、疑惑の大金…多くのひとの運命を狂わせた、たった一日の物語が浮かびあがる。数多の作家をも魅了した、ユーモアとスリル、そして飛び立った“鳩”のあまりにも鮮烈な軌跡。現代小説の名手佐藤正午渾身の最高到達点。

⚫︎感想
新鮮な作品だった。元直木賞作家の津田が、現実に起こった出来事を繋ぎ合わせて、小説内虚構を物語るが、どこまでが創作なのかわからない。しかも小説を書いている津田とリアルタイムで現実も進行するというスタイルは新鮮。

そして全然主人公の津田に共感も同情もできる部分がないのがまたおもしろい。
「月の満ち欠け」も合わせて考えると、虚構を異なる手法で現実的に描くことが巧みな作家だと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年2月1日
読了日 : 2024年2月1日
本棚登録日 : 2024年2月1日

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