告解 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2022年8月10日発売)
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本棚登録 : 990
感想 : 71
4

最初から読み進めるのが辛かった。
被害者家族、加害者、加害者家族
そして彼らの友人 知人
登場するその誰もが、どこにでもいそうな普通の人
プロローグのあらすじからして、彼らが幸せになりそうな未来が見えないんだもん。

この作品を読んで興味を持ったので色々と調べてみると日本は特に「世間」を気にする風潮があると。(少なくとも欧米と比べると)
なので、加害者本人だけじゃなくて加害者家族にも糾弾の矛先がむくと。

あと、事件に直接関係ない第三者が、加害者やその家族にかんする(事件には直接関係ないような)プライベートなことまで暴いて批判するその心理について。
以前に読んだ小説で(確か、中山七里の作品だったと思う)「加害者は普通とは違っていて、加害者となりえる理由があったのだと納得したいから」というのがあって。
つまり、「加害者(とその家族は)自分とは違う」「それこそが、事件を起こした理由」「だから自分(やその家族は)大丈夫、普通である自分は加害者にはならない(はず)」と思いたいから、というのがあって。
大変、腹おちしたのでよく覚えているのですが。
この作品、この心考え気持ちをがっつり否定してくれる。

飲酒運転してひき逃げ。しかも、200メートルも引きずられて、被害者は死亡。
こう書くと、どれほどひどい奴だ!?って思うけど、実際は普通の(かなり恵まれてはいるが)大学生。事故(ひき逃げなのでもはや事件だな)を起こしたときの心理描写も、了解可能で、もしかしたら自分だって同じことしてしまうかもと思わせる怖さ。

いつ、自分が「加害者」になるかわからない
ましてや「加害者家族」になる可能性

若いときは、家族も糾弾されて当然……とまでは言わないけど仕方ないかなって思ってた。
でも、年を重ねて、結婚もして、子供を持つことも考えて……ってなったときに、「家族」というものをもつ怖さみたいな。家族だからって、すべての行動をコントロールなんてできないもん。
てなると、やっぱり加害者家族を糾弾するのはちがうのでは??
でもでも、じゃあ加害者家族を受け入れていけるか…と、問われると、自分の心持ちを考えると難しいなぁと思ってしまう矛盾。

話の本筋は、加害者のその後について、なので本筋とはちょっと離れた事柄ですが、色々考えさせられた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年3月30日
読了日 : 2023年3月9日
本棚登録日 : 2023年3月9日

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