動物園にできること (文春文庫 か 28-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年3月10日発売)
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動物園の最先端である(当時の)アメリカの動物園への膨大な取材を元に、動物園を取り巻く問題と動物園の取り組み、動物園がなすべき役割等を様々な角度からまとめている良書。以下、印象に残った話
> 動物園の借り。ゴリラの子供を連れてくるには、家族の絆が強いゴリラの群れの成獣を全て殺さなければならない等、動物園には動物達に借りがある。その借りを返すという潜在意識があるために、アメリカではエンリッチメントや種の保存、環境保護活動が盛んに行われているのではないか。
> 動物園の問題点。動物園は種の保存や環境保護に対するメッセージを送る事はおこなっており、それが動物園の存在意義の一つである。しかし、実際にどのような環境保護活動をするべきかという方向性の提案まではできていない。一方で来園者は必ずしもそのようなメッセージに興味がある訳ではない(動物園での会話のほとんどが動物の姿形などであり、その動物が絶滅危惧種である等の話までする人はほとんどいない)。
> 日本の動物園の当時の現状。アメリカの寄付を背景にした動物園管理は、お役所的な遊園地的な日本の動物園には必ずしも全て当てはめる事は出来ない。しかし、限られた財源の中で日本的な発想の元生まれたチンパンジータワーは風景にはとけ込めないがエンリッチメントとしては高い効果があり(あるようにみえ)、それが海外でも逆輸入される等、動物園の分野では遅れている日本でも世界に貢献できる点があるというのは非常に素晴らしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 動物
感想投稿日 : 2014年4月9日
読了日 : 2014年4月9日
本棚登録日 : 2014年3月27日

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