#教師のバトン とはなんだったのか: 教師の発信と学校の未来 (岩波ブックレット NO. 1056)

  • 岩波書店 (2021年12月7日発売)
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文科省が「教員志望者減少に歯止めをかけるために教職の魅力を発信してもらおう」と始めた「#教師のバトン」で、現職教員から労働環境の悪さを訴える投稿が相次いで炎上したことについて振り返っているブックレットです。

投稿が炎上した当時は連日のように報道され、教員の働き方改革を進めようとする動きや、やりがい搾取などと言う批判など、多くの話題が取りざたされました。

これまでの経験の積み重ねから「教員は労働環境・労働条件について(賃金等の”下世話”な話について)訴えるべきでない」というような雰囲気は「間違い」であり、「児童生徒を健全な市民社会の担い手とする教育そのものの在り方としても不適当である」という指摘は新鮮であり、また心強くもありました。
教育者として政治的中立性を意識して生徒に接することは当然ですが、「勤務時間外」に「自分の意見を発信する」ことは認められるし、これまで以上に多くの教員が声を上げるべき、という流れをぜひ作り上げてゆきたいと思います。

しかし、「#教師のバトン」が炎上してから2年が経ち、世間の関心もだいぶ薄れたように思います。
教員免許更新制度の撤廃もあり、教員の負担が減った部分があることも事実ですが、給特法により残業代が出ないこと、土日祝日の試合引率などが当たり前にあることなど、まだまだ改善が必要です。

教員の負担が多すぎる、という課題の根本には人手不足があるのは間違いありません。子どもと関わる仕事がしたい、教職に関心があるという人の中でも、「劣悪な労働環境であるなら回避しよう」という人は少なくないのでは、と思います。制度面で負担減を目指す動きは継続すべきですが、待遇の改善も不可欠でしょう。

教育が破綻すれば、社会が破綻してゆくことにもつながります。今では「下火」になってきてしまった感もありますが、ぜひ多くの人に関心を持ってもらいたいテーマです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 個人
感想投稿日 : 2023年5月24日
読了日 : 2023年5月24日
本棚登録日 : 2022年11月10日

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