ルール!

著者 :
  • 講談社 (2023年10月26日発売)
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本棚登録 : 124
感想 : 15
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「ブラック校則」というものが世間で話題になってから少し時間が経ち、社会の注目度も下がってきているような気もします。
もちろん、それぞれの学校に個別の事情や歴史がありますから一概にパッと見た印象だけでその是非を論じることはできない部分もありますが、その校則で様々な規制を受ける生徒自身がその校則の意義や必要性について考えることが必要だと思います。
指導する教員も「校則で決まっているから」という理由で、指導される生徒も「校則は守らなければならないから」という理由で、それぞれが思考を停止させて無批判に状況を受け入れてしまっている現状は、「それが社会の常識だから」「政府が決めたことだから」と社会の様々な事象を問題として捉えることなく漫然と生きることにもつながる、危険な行為だと思います。

校則が「悪」で、何が何でも改正したり撤廃したりしなければならないとは思いません。一見、不自然で不条理に思えるような規範であっても、それによって守られる人がいるのかもしれませんし、その規範を制定した拝啓には忘れてはならない過去や教訓が込められているのかもしれません。そういったことも含めて、きちんと当事者が考え、意見が異なる人と(対決ではなく)対話を繰り返す事、安易に多数決に流されるのではなく少数意見もきちんと汲むことなど、「校則」の在り方について考えることは、実社会に活かせる経験を得る貴重な機会でもあります。

YA文学として「エンタテインメント性」や「中学生でも活躍できるという爽快感」を含んでいますから、この作品の主人公たちはやや強引な手段を取って大人(教員)たちの裏をかくこともあって、もう少しきちんと根回しをしたほうが実際にはうまくゆくでしょう。そういった部分はさておき、彼らが自分自身の言葉で考え、自分事として校則に向き合っている姿は、多くの中学生の希望になるのではないかと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 選書
感想投稿日 : 2024年3月13日
読了日 : 2024年3月13日
本棚登録日 : 2024年3月13日

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