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著者 :
  • 文藝春秋 (2019年6月7日発売)
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本棚登録 : 383
感想 : 70
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「消防士」という、ある種「男の子の夢」のひとつでもあろう職業をテーマとした作品です。
…とはいえ、進学校の男子校だと、あまり消防官を目指している、ということは聞かず、体力への自信のなさや、TVでの扱い(警察や医者はドラマになっても、消防士はドラマになることがすくない?)なども関係しているのでは、とも思います。

ある消防署に勤務する消防士たち、一人ひとりの物語をまとめた短編集です。おおまかな時系列で短編が並んでいますが、一つひとつの物語が関連しているわけではなく、それこそ一話完結のドラマを見ているような感覚です。
登場人物の個性も特徴がありますし、それぞれの物語には「どんでん返し」とでも言えるような「謎解き」の要素もあり、気軽に読み進めることができると思います。

一方で、それぞれの物語について、動機が不明瞭であったり、事件の「現実感」がなかったりする、といった部分もあるように感じました。個々のストーリーを読み終えて、「感動」とまではいわなくとも確かにしみじみさせられる感覚があったり、「消防士」も一人にの人間であって弱い部分があるということを改めて気づかせてくれたりするなど、楽しめる要素もあったので、全体を通して「中途半端」な読後感となってしまったのが少し残念です。全9編の短編が収録されていますが、本数を減らして(とりあげる事件を減らして)、一つひとつの事件についてより深い作品になればもっと面白かったのかな、とも感じます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 仕事
感想投稿日 : 2019年7月11日
読了日 : 2019年7月11日
本棚登録日 : 2019年7月11日

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