<内容紹介より>
生徒さんには、自分が作戦計画の立案者であったなら、
自分が満州移民として送り出される立場であったなら
などと授業のなかで考えてもらいました。
講義の間だけ戦争を生きてもらいまいした。
そうするためには、時々の戦争の根源的な特徴、
時々の戦争が地域秩序や国家や社会に与えた影響や変化を
簡潔に明快にまとめる必要が生じます。
その成果がこの本です。
(本書「はじめに」より)
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東京大学の加藤陽子教授が栄光学園の歴史研究部の生徒を相手に行った講義をまとめた本です。
近代日本が直面した対外戦争(日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変と日中戦争、太平洋戦争)がどのような状況の中で起こっていったのかを、ち密な資料考証により明らかにしています。
高校生を相手に話をしているのだと、軽く見ているとその専門性の高さに驚かされます。さすがに神奈川一の進学校の生徒(しかも歴史を好きで研究している部活の生徒たち)だけあって、既存の知識も豊富です。
全く歴史の知識がない人の入門としての書籍ではなく、ある程度の歴史知識がある人が読むからこそ、驚きや新たな発見があるのではないでしょうか。
「歴史から何を学ぶのか」という問いは歴史学を専攻している人だけでなく、すべての人間にとって必要な問いだと思いますが、「学ぶ」ためには当時の状況(判断を下した人が「なぜその判断を下したか」ということだけでなく、それを社会(民衆・大衆)がどのように受け止めていたのかということも含めて)を正確に把握していることが不可欠です。
歴史を振り返って、「あの人が悪かった」と指を指すのではなく(戦争責任の所在を明らかにすることと、特定の個人を非難することは違うと思います)、同じような戦争の惨禍を繰り返すことが無いようにするためにも、未読の方にはぜひ一読をお勧めしたい一冊です。
特に序章「日本近現代史を考える」は圧巻でした。
- 感想投稿日 : 2018年3月25日
- 読了日 : 2018年3月25日
- 本棚登録日 : 2018年3月25日
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