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幼馴染みに長年抱いていた恨みが発端の、すぐ解決すると思われた放火事件。夫をアイロンで殴打した主婦が、自分はDVを受けていたと主張。夫の愛人が出産した子供に、虐待の痕を見つけた妻がとった行動とは?左陪席をつとめる新米裁判官・久保珠実は、かつて裁判長にいわれた「裁判は最後まで何が起こるかわからない」の言葉を何度も反芻する―。現代の日本を象徴するかのような三つの事件。悩み議論する裁判員たちをリアルに描く著者迫真のミステリー。
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表題作のほか、「DVのゆくえ」 「二人の母」
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裁判員裁判が舞台である。裁判官たち、とりわけ裁判官になりたての新人・珠実の、いまだに一般人の感覚を忘れていない判断や、裁判員たちの緊張感や戸惑い、責任の重さを実感する様子など、裁判員裁判の裏表がよくわかる。三つの物語の題材となった事件は、どれも判断が難しく、どこからどう考えていけばいいのか一般人には見当もつかないが、裁判官たちが上手く個人個人の考えを引き出しているのも印象的である。判決シーンまで描かれていないのがもやもやさせられるが、だからこそなおさら考えさせられる一冊になっていることも確かである。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
な行の作家
- 感想投稿日 : 2013年3月27日
- 読了日 : 2013年3月27日
- 本棚登録日 : 2013年3月27日
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