寿フォーエバー

著者 :
  • 河出書房新社 (2011年8月23日発売)
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本棚登録 : 388
感想 : 89

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東京都下の結婚式場・寿樹殿(じゅじゅでん)に勤め始めて5年目の井倉靖子は、彼氏イナイ歴9年の28歳、独身女性。"お客様たち(カップル)"のラブラブっぷりにあてられて心の中で毒づいちゃったり、逆に担当する花嫁さんに肩入れしすぎて辛い思いもすることもあるけれど、それでも彼女たちの幸せな顔を見るために、今日も自分なりに頑張って働いている。
ある日、頼りにしていた大先輩が急に退職したため、靖子は超ビッグで責任重大な結婚式をたった一人で担当することに。そんな中、近隣には強力なライバル店が出現、さらに、ラブラブだったはずのカップルにも破局の危機が! 相次ぐピンチに一生懸命立ち向かう靖子だったが......。
優秀でも美人でも、ましてやモテ女でもなく、恋も仕事もままならないごくごく普通の靖子と、彼女をとりまく個性的な面々が結婚式場を舞台にくりひろげる、クスッと笑えてホロリと泣ける、幸せになれる"結婚×お仕事小説"!
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ハートとピンクとゴンドラと。立川から青梅線で数駅のところにある、いささか時代錯誤と言えなくもない結婚式場・寿樹殿が舞台である。個性的なメンバーの中で、勤続5年目28歳の靖子は、一生懸命ではあるものの、なんとなくこなしているという感じで日々仕事をしていた。ビッグカップルの婚礼の担当として煩雑な仕事をしつつ、近所にできたライバル店のことも気になり、合コンのことも気になるのであった。だが、いろんなカップルのさまざまな事情を見聞きし、個性的過ぎる同僚や上司とともに、ライバル店に負けないようにアイディアを出し合っているうちに、知らず知らず以前よりも仕事に心がこもるようになっているのだった。寿樹殿のスタッフたちのキャラクターが強烈過ぎるので、靖子の特徴のなさも個性のひとつになっているように見えるのがおもしろい。そして、この人たちがいるからこそ寿樹殿はきっといつまでも愛される結婚式場なのだろうな、と思わされる一冊である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: や行の作家
感想投稿日 : 2012年1月31日
読了日 : 2012年1月31日
本棚登録日 : 2012年1月31日

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