純粋理性批判 (2) (光文社古典新訳文庫 Bカ 1-3)

  • 光文社 (2010年5月11日発売)
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感想 : 23
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 感性を扱った第1分冊に続く本書では、主に人間の認識における知性の役割に焦点が当てられる。ちなみにこの中山訳では「悟性」ではなく一貫して「知性」が使用されている。
 哲学というものは往々にしてそうなのだろうが、用語の使用が一般のそれと全く乖離しているために用語を見ただけではそれが意味するところを把握しづらいところがあるが、本分冊では特にこれが目白押し。何度読んでも「判断力」と「想像力」の違いや、「総合」とか「統覚」の関係性が頭に定着せず、その度に定義を確認する羽目になる。
 極め付けは頻発する「根拠づけ」という言葉。流石にわかりづらいと考えたのか、訳者も解説に多くの紙面を割いているがそれでもピンとこない。訳者によれば、ここで行われているのは直訳の「演繹」ではなく「権利問題」、つまりカテゴリーにより生ずる客観認識の場合ならば、感性・知性・理性のどれがその認識を生じさせるかについての「権利」=「権限」を有しているのかが論じられているのだという。これは直感的には極めて理解しにくい。それならもっと字面から意味がはっきりわかる言葉にしてくれればいいのだが…。

 なお本分冊の「純粋理性批判」全体の中の守備範囲はさほど広くない割には、解説の記述量が多く丁寧な説明がされている。やはり経験に基づく判断によりカテゴリーが理解されるのではなく「カテゴリーを用いた経験の統合が客観的判断そのものを可能する」という例の転回が、「批判」の前半の大きな山場となるからだろう。ここのところは多くの例示を用いられていることもあり割と理解しやすかった。ロックやヒューム的な経験論との対照も鮮明でわかりやすい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年7月11日
読了日 : 2020年11月6日
本棚登録日 : 2020年11月6日

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