丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2013年6月26日発売)
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感想 : 947
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 読了。出版社を講談社から新潮社に変えての、12年ぶりの十二国記シリーズ新刊。短編が4つでどれもが国に生きる民の話であり、主上と麒麟による活劇やサスペンス等ではなく、十二国の世界を掘り下げるような話が続いていた。相変わらず描写が圧巻。
 麒麟も王もほとんど出てこない為、十二国記にファンタジーのような幻想さを求めるか、異世界に思索を巡らす楽しさを求めるかでかなり評価が分かれる気がする。自分は後者だったので大満足。特に3話目の「青条の蘭」は民が国を想う生き様が描かれていて、思わず視界がぼやけた(´;ω;`)
 個人的に十二国の世界は、ものすごく生きることに容赦なく皆がシビアな人生観を持ち殺伐としているイメージだったので、こういう王と麒麟以外の部分でも国の為に奮闘する人が報われるような話が読めてすごくホッとした。表題作の「丕緒の鳥」も素晴らしい。陽子の存在感が際立つ。
 12年待ったあげく世界観を深彫するだけかよと言ってしまえばそれだけだけど、それでも高1からこの世界に迷い込んだ住人の一人としては、世相はどうあれ十二国が今も尚進んでおり、更に慶国の王と民両方に希望が芽生えつつあることが、とても嬉しい。願わくは、次は長編が読めますように。
 ちなみに一番好きな話というかシーンは、「帰山」の終盤、奏国の王族家族で食事しながら話し合う描写。家族全員が王であり、それぞれが国を想い報告と相談(命令ではなくあくまで互いの相談)を繰り返し、600年という治世を築き上げてきた執務のワンシーンが、今もなんとなく自分の理想と被る。
 本当はあの宗王一族のように、全員が等しく家を想い国を想い動いていければいいと心から思うけど、リアルだと老いと身分の変化がそれを妨げるのはまぁ、已む無し。その中やりくりするしかないけれど、やっぱりああいう経営者会議は羨ましいなぁ・・・もっと真面目に、というか真摯に生きたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年7月27日
読了日 : 2013年7月27日
本棚登録日 : 2013年7月27日

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