クラバート

  • 偕成社
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この児童文学の傑作をようやく私も読むことができた。聞きしに勝る名作。

両親に死なれ、物乞いのような生活を仲間たちとしていたグラバート。
ある日夢の中で11羽のカラスと声に呼ばれ、シュヴァルツコルムの水車場へと誘われる。
怪し気なその水車場で、11人の職人たちと共に、親方から仕事と魔法を教わることになる…

この水車場も親方も謎ばかり。独裁者のような親方から守ってくれた、信頼する職人頭のトンダは、大晦日の夜、死んでしまう。
こうして毎年誰かが死に、またこの水車場に新しい見習いがやってくる…

誰よりも熱心に魔法を習得したクラバートは、親方と生死をかけて対決することとなるのだった。。

クラバートはトンダから、復活祭の夜に、好きな娘を死なせてしまった秘密を打ち明けられる。
少年だったクラバートには、わからなかったその日のトンダの言葉を、いつの日か胸にする日が、つまり、クラバートにも想いを寄せる少女ができる。その少女への想いが、更に物語を深く、めんどうにして行くようだった。

クラバートが彼女に焦がれて仕事も手につかないようなところがとっても好感を持てた。少女の存在なしに、ここまでクラバートが親方と戦うことができただろうかと思う。

クラバートの物語の中で大切なのは、死んでしまった先輩への想いと、仲間たちとと助け合って一緒に親方と対峙していくところにあるのだろうけれど
恋、いいじゃないですか。

プロイスラーは、ドイツに住むスラヴ系民族に伝わる、クラバート伝説をもとにこの物語を書き上げたのだけど、
もともとその伝説には少女はなく、実の母が関わっていたそう。でも、少女の美しい歌声に取り憑かれたように惹かれるクラバートが私は好きだ。

なんとももの悲しさあるスラヴ民族の色をたたえたお話しだが、魔法を試すために仲間を馬にして売り渡すお決まりの外出や、職人たちが大好きなデカ帽の話しなど、生き生きとした若い職人たちの姿を描いている所は、やっぱりプロイスラーだなと思わせる楽しさもあった。

本当に大人にもたのしめる作品。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年1月23日
読了日 : 2022年1月23日
本棚登録日 : 2022年1月23日

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