もちの木を探して迷い込んだ、小さな泉のある小山。
三角平地。
この、素敵な場所を、仲間に伝えることなくひとり好きな本を抱えて過ごすことにしたぼく。(まずはここに共感)
トマトのおばあさんから聞いた、この小山に伝わる古いはなし…
ある日出会った小さな女の子、片っぽうのくつ。
初めての こぼしさまとの出会い。
このあとぼくは引っ越してしまい、次第にこの小山のことを忘れてゆく。
そして戦争が始まる。僕は中学生になり、工場で働かされ、父親は海に沈んだ。
_毎日が苦しいことばかりなのに、同時に底抜けに楽しかった。_
子ども時代の戦争体験をこんな風に描いてしまう…でもこれって今の時代の報道だけで戦争を知る私たちとどこか通ずるというか、子どもらしくて、正直な描写に驚きました。
戦後、焼け野原の中で、この小山を思い出す感覚もなんだか素敵だった。そうしてお話しがぐっと進んでゆきます。
こぼしさまを世間から守る事を考えはじめるぼくと、ぼくを試す小人たち。
小人といえば、コオロギのような動きの描写があり、小屋に何百という小人たちが集まった時は、私はぞっとしましたww
あっという間に主人公が大人になっている所も新鮮。そしてこの後あの小さな女の子と再会するのですが、
ぼくはなかなかその事に気づかなくて、読者はイライラしちゃうんですよね。
でも、この後すべてはいい感じに回収されてゆく…。
幼稚園の先生になった女の子、おチビさんとの過ごし方が良かったですね。
ぼく、セイタカさんは、女の子の扱いがとても紳士的なのです。この昭和のど真ん中に、こんな素敵な男の子を描いているってすごいよね、という話しにもなりました。
当時としては進歩的だったのでは?
そして今となってはおかげで長く愛される物語になっているのかなと感じました。
この、あっという間に主人公が成長している感じがYA文学として通じそうだなと思わせました。
小山の地主だった峰のおやじさんや、男勝りな幼稚園の園長先生など、魅力的な脇の人物も良かった。
- 感想投稿日 : 2023年1月27日
- 読了日 : 2023年1月23日
- 本棚登録日 : 2023年1月27日
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