ムーミン谷の彗星 (ムーミン童話全集 1)

  • 講談社 (1990年6月22日発売)
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感想 : 95
5

大好きです!

この淡々とした語り口とユーモアの中に、自然や家族への愛が散りばめられている!

物語の始まりは、ムーミンと、小さなどうぶつであり、家族でもあるスニフとの幸せな小さな冒険から始まる。
「いつかはわからないけど、ちゃんと帰ってくるからね。」と、ムーミン。
「気をつけてね。」この一言で送り出すママ。
このシーンでこの一家のお互いを尊重し合う関係を思いった。無理に干渉せず、信じあっている家族の形が本当に素敵で羨ましい。

そこにおかしな哲学者のじゃこうねずみがやってきて、地球が滅びると預言する。パパとママは、ムーミンとスニフを旅に出すことにする。遠い山の天文台に行き、宇宙がどんなかを調べてくるようにと。

天文台への旅の途中で出会うスナフキン、彼の存在がとても大きく、自由と真実を私たちに語り、教えてくれる。
「何でもでも自分のものにして、もって帰ろうとすると、むずかしいものなんだよ。ぼくは、見るだけにしてるんだ。そして、たちさるときには、それを頭の中へしまっておくのさ。ぼくはそれで、かばんをもち歩くよりも、ずっとたのしいね。」
このセリフが本当に彼の全て。そして、現代人の私たち読者へのメッセージ。なぜそんなに所有するのか?
…物語の中で何度もスナフキンは所有することの馬鹿らしさを語ってくれるのだけど、同時に誰よりも愛と強さを示して、安心させてくれる存在なのだ。

ワガママで子どもらしさ全開のスニフとは違い、ムーミンは前向きで、ママを、家族をしっかり信じて己の道を進む男の子。
まだ会ってもいないスノークのおじょうさんのことを話に聞き、すっかり恋してしまう。
「彗星なんか、ママが何とかしてくれる、でも今はスノークのおじょうさんのことたすけなくちゃ」と、恋に奔走するムーミンもまた愛おしい。ママの大きな愛を知っているからこそ、恋をし、女の子を大切にできるのかもしれない。

天文台からの帰り道の旅は、それは辛いものなのだけど、最後までママを信じて歩き続ける。それこそがこのムーミン一家のお話の核になるのではないかしら。こんなふうに、私も子育て出来ただろうか…大人になってしまったので、そんなことを考えながら、またおかしな登場人物たちに笑いながら、とにかくワクワクと最後まで読むことができた。

子供の頃に見たアニメのムーミンのことはすっかり忘れ、この物語に没頭することができた。それにしても、子ども向けのお話で、哲学者をだしてきて、さらにカタストロフィについてまで語り始める…北欧のなんというか自然の懐の深さを感じずにはいられない!!

おっと、スニフの大切なひみつ、上が『ね』で、下が『こ』のことも、お忘れなく(・∀・)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年10月17日
読了日 : 2017年10月17日
本棚登録日 : 2017年10月17日

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