侍女の物語 (ハヤカワepi文庫 ア 1-1)

  • 早川書房 (2001年10月24日発売)
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感想 : 191
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me too運動と相俟って新たにドラマ化され、
再度脚光を浴びたと思しい、
1985年発表(原著)の、
当時から見た近未来ディストピアSF長編小説。

性の乱れや人口減を憂えたキリスト教原理主義勢力が
アメリカ大統領を暗殺し、政権を掌握、
女性の仕事と財産を奪い(銀行預金は父または夫の名義に変更)、
出産可能な女性を教育施設に送って「侍女」に仕立て上げ、
権力者の家に住まわせて、その子供を産むように仕向ける。
「侍女」は書物を読むことも書きものも禁じられ、
情報は遮断されている。

物語の語り手は、夫とも幼い娘とも引き離され、
本来の名前を奪われて「フレッドに仕える女」の意味で
「オブフレッド(of Fred)」と呼ばれている。
彼女は生き延びるため、
従順な「侍女」を装って自らを環境に順応させようとするが、
夜、一人きりになると夫や娘や母や友人に想いを馳せ、
かつての生活を回想する。

この、読んでいて気分が悪くなるような小説が
現代において再評価されることの意味を考えたい。
執筆当時に著者が憂慮した事態は過去の問題ではなく、
これから先の世界にぽっかり口を開けて
待ち構えているかもしれない。
だが、「生む機械」だとか「生産性」があるだのないだの、
政治家などに言われる筋合いはないのだ。

一連の事件をわかりやすく整理した最終章
「歴史的背景に関する注釈」が、
あまりにクールでショッキング(笑)。
現在の我々の営みも、未来人に回顧されれば、
ちっぽけで他愛ない話として片付けられるのだろうか……
と考えると、二重に怖くなる作品である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  英米語文学
感想投稿日 : 2019年1月9日
読了日 : 2019年1月9日
本棚登録日 : 2018年12月2日

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