初期の恒川作品。久しぶりの再読。やはりこのころの雰囲気が好きだなと思う。
様々な形の「牢獄」3編。
「秋の牢獄」
11月7日に捕らわれてしまった『リプレイヤー』たち。同じ11月7日をどう過ごすのか。どれほど楽しもうと自暴自棄に走ろうと、朝が暮れば全てがリセットされまた同じ日を繰り返す。
なぜ『リプレイヤー』が生まれるのか、なぜ『リプレイヤー』は消えるのか、そこに『北風伯爵』は関係しているのか。
「神家没落」
突然、『特殊な家』の『家守』になってしまった青年。日本中を一年掛けて巡る『特殊な家』から逃れるためには替わりの人間に『家守』を押し付けるしかない。
そしてある日格好の人物が現れ、青年は『特殊な家』から解放されたのだが…。
「幻は夜に成長する」
『霊狐のお力』を『祖母』から引き継いだリオは、その力故に囚われ、『客』の『地獄の話』を聞く日々が続く。リオの喜びはただ『怪物』を大きく育てること。
囚われることが幸せなのか、解放されることが幸せなのか。囚われの日々に何を見つけるのか、解放の先には何があるのか。
不条理で残酷な一面、このような日々が続くのも悪くないとも思ってしまう不思議な魅力がある。
短編集だからか、サラっと書かれているからなのか、ホラーというよりはドラマの要素が強い。
だが主人公たちの背景や設定が詳しく書かれているわけではないし、彼らのその後も想像の余地が大きいのでリアリティよりもファンタジーの要素が強い。
楽しく読めたが、読み終えてみれば掴み所のない不気味さもある。
日常生活の隅っこに、あるいは目に見えていないどこかにこんな世界があるのかも…とちょっと想像すると怖い。
- 感想投稿日 : 2022年12月14日
- 読了日 : 2022年12月14日
- 本棚登録日 : 2022年12月14日
みんなの感想をみる