戦国の教科書

  • 講談社 (2019年7月31日発売)
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感想 : 27
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6つのテーマに基づいた6人の作家による短編と、そのテーマについての解説、ブックガイドが掲載された、なかなか凝った内容。

1時限目『下剋上・軍師』
「一時の主」矢野隆(黒田官兵衛)
2時限目『合戦の作法』
「又左の首取り」木下昌輝(前田利家)
3時限目『海賊』
「悪童たちの海」天野純希(冷泉新五郎)
4時限目『戦国大名と家臣』
「鈴籾の子ら」武川佑(新発田重家)
5時限目『宗教・文化』
「蠅」澤田瞳子(応其)
6時限目『武将の死に様』
「消滅の流儀」今村翔吾(松永久秀)

それぞれの短編も面白かった。
関ヶ原の戦いに於いての黒田官兵衛とその息子・長政との考え方、価値観の違いが浮き彫りになる1時限目。ジェネレーションギャップというよりは、時代の潮目を見切った人の違いということだろうか。
同じ傾奇者として出発しながら途中で路線を変えた織田信長、いつまでも生き方を変えられない前田利家の違いを描く2時限目。二人に影響を与えたそれぞれの人物が敗れ去る側というのが興味深い。
3時限目は個人的には新鮮な海賊もの。新五郎たちの行く末には不穏なものしか感じないのだが、それでいてどこか痛快なような青春もののような感じも受ける。
4時限目と5時限目は申し訳ないが、あまり小説としての魅力は感じなかった。
6時限目は「じんかん」でも松永久秀を描いた今村翔吾さんの短編。「じんかん」とは少し前半生の設定を変えてあった。どちらが先に書かれたのかは分からないが、『悪名も名でござろう?』という松永のセリフやそこに至る展開は「じんかん」よりもスンナリと受け入れられた。

それぞれの短編のあとに挟まれる解説もなかなか興味深い。
特に戦国での作法、大名と国主の関係、海賊など知らないことも多かったのでこれから時代物を読む上でも参考になりそうだ。
ブックガイドもかなりの数。古いものから新しいものまで色々あった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 解説本
感想投稿日 : 2020年10月15日
読了日 : 2020年10月15日
本棚登録日 : 2020年10月15日

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