夫婦、親子などの関係を描いた6編。
淡々としているのだが、ゾッとしたりドキッとしたりする話が多かったように思う。
「家猫」
元義母、元夫、元妻、現内縁妻それぞれの視点で語られる家族関係、夫婦関係。まるで『藪の中』のようで、本人が見たい風景が語られていく。義母や夫はともかく、元妻にしても彼女が一方的に被害者かどうかは分からない。
「ローゼンブルクで恋をして」
『全国の都道府県名をドイツ語にすると無駄にかっこいい』というブログ記事で変換したら『ローゼンブルク』とは?
父の『終活』をめぐる騒動なのだが、父と息子だから収まる話なのかなと思った。娘だったらまた違う感情になりそう。
「川端康成が死んだ日」
25Pほどの短い話だが、作中登場する川端康成が印象的。こんなことを言いそうだ。
ここに描かれる母親は子供たちからすれば身勝手極まりないのだろうが、それだけ追いつめられていたということだろう。そして川端康成がその母を救ったのかも知れない。
「ガリップ」
これは正直怖いだけだった。三者がそれぞれ肝心なところに踏み込まずにけん制し合っている。踏み込んでしまったらこの関係が崩れてしまうからなのだが、私なら耐えられない。この話を読んで表紙を見ると怖さ倍増。
「オリーブの実るころ」
唯一ホッとする話。ご近所に越してきた老人の過去。無茶をしてまで結ばれたかった女性とは結局結ばれず、だがずっと気にかけていた。
当事者の二人の潔さが素敵だった。そして老人の願いが通じて良かった。
「春成と冴子とファンさん」
結婚相手の、変わった父と母。本人が幸せならそれで良いし、父も母も息子のことを思っているし主人公との結婚を喜んでいるのでそこは安心できるのだが、今後の付き合いを考えると気遣いが大変そうだなと思ってしまった。
久しぶりに読んだ中島さん作品。中島さんらしいようでもあるし、もうすこしホッとする話が良かったようにも思う。
- 感想投稿日 : 2022年10月19日
- 読了日 : 2022年10月19日
- 本棚登録日 : 2022年10月19日
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