南アルプス山岳救助隊K-9 異形の山 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店 (2021年9月8日発売)
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感想 : 13
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〈南アルプス山岳救助隊K-9〉シリーズ第10作。

今回はなんと『北岳に雪男出現?』の巻。
冒頭は大学生が登山中に目撃した流れ星。その後、山小屋の厨房が破られて食料が荒らされた現場から謎の白い毛玉が。そして山岳カメラマンが望遠レンズで捉えたのは白い毛に覆われた、人に似た大型の猿のような姿。この生物は何なのか、宇宙から来たのか?

荒唐無稽な話かと思ったら、そこは樋口さんのこと現実性ある話にしてくれた。
謎の生物は登山者のテントを襲ったり、特別天然記念物のライチョウを襲ったり、いつ人的被害が出てもおかしくない状況。
北岳はついに入山規制がされ、本格的に謎の生物捜索となるのだが、勿論そう簡単にはいかない。

注目を浴びたいYouTuberにやはり名を挙げたいハンターコンビが北岳に入っている。
そして進藤たちが山小屋で見つけた謎の外国人も怪しい。

今回頑張ったのは進藤がコンビを組む川上犬リキ(とヘリのパイロット陣)。小さな体で雪山を駆け臭いを辿り、自分の数十倍はあろうかという謎の生物にも立ち向かう。無理をしないで!とハラハラしたが、本当に勇敢だ。

テーマとしてはいくつかあるが、その一つ(他はネタバレになるので書けない)広河原山荘管理人・滝沢謙一が考える『命を奪うことの意味』。『食料を得る』だけではなく『生態系の維持という意味において重要な仕事』である狩猟に携わることによってより命をいただくことの重みを考えなければならない。川辺のように単なる『猟欲』で行ってはいけない。

夏実は終始謎の生物の駆除に反対していたが、単なる感情論ではなかった。どんな人間であれ救助するという彼らのぶれない姿勢が通じる相手かどうか、それは読まれてのお楽しみ。

静奈のアクシデントシーンが僅かだったのは残念だが、たまにはこういう回も良いだろう。夏実と深町の仲良しシーンがあったし。
個人的には江草隊長の体調が心配だが何とかリハビリ頑張って復職して欲しい。山岳救助隊みんなのお父さんだから。

それにしてもこのご時世にあの国が登場するとは。

※シリーズ作品一覧
(★はレビュー登録あり)
①「天空の犬」
②「ハルカの空」
③「ブロッケンの悪魔」
④「火竜の山」(文庫化の際「炎の岳」に改題)★
⑤「レスキュードッグ・ストーリーズ」★
⑥「白い標的」★
⑦「クリムゾンの疾走」★
⑧「逃亡山脈」★
⑨「風の渓」★
⑩ 本作 ★

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 警察・刑事
感想投稿日 : 2022年3月23日
読了日 : 2022年3月23日
本棚登録日 : 2022年3月23日

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