一応ミステリーカテゴリーにしてみたが、むしろエンタメ要素の方が強いような。
昭和12年を舞台にした、個人的には好きなレトロ感ある設定。
少年探偵・那珂一兵が知り合いの記者と共に名古屋の博覧会を取材中、東京では思わぬ事件が起きる。
事件そのものは凄惨なのだが、一兵少年がその場に居合わせていないだけに謎解きもどこか冷静。その方が返って良かったけれど。
乱歩先生の少年探偵団シリーズのようなテンポの良い語り口、でも中身は大人向け乱歩作品のようなエログロさがあったり、その後の歴史を暗示する陰鬱さも垣間見えたり。
事件の一番の謎は、名古屋にいた筈の人間がどうやって東京で殺されたのか、そしてなぜそこまで大掛かりな事件を起こさねばならなかったかという、HOWとWHY。
HOWに関してはそれほどは驚かなかったが、WHY部分とその結末には苦しくなったり辛くなったり。
そして一兵少年の片思いの行方に関わる、ある事件に関しても、その後の歴史を知る読者側としてはWHYは分かるのだが、一兵少年には理解出来ないというところが、なんとも苦いような。
謎解きというよりは、一つの歴史の裏側を垣間見ているような、大きな歴史のうねりの中で、こういう前振りが色んなところで起きていたのかなというちょっとしたドラマを見せてもらったような、そんな作品だった。
調べてみると一兵探偵の作品は他にもあるようだ。
機会があればまた読んでみたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー・名探偵
- 感想投稿日 : 2018年10月24日
- 読了日 : 2018年10月24日
- 本棚登録日 : 2018年10月24日
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