ドイツ・ホーハイム警察署刑事、オリヴァー&ピアシリーズ第六作。
序盤は様々な視点で場面転換が続くため、一体どこを軸に進むのか分からない。
キャンピングカー生活をしているらしき男、テレビの人気女性キャスター、ピアの友人エマ、何か酷い目に遭っているらしき少女の回想、オリヴァー、そしてピア。
これだけでも六つもある。
しかし読み進めるに連れて、オリヴァーとピア以外の話が巧妙に繋がっていることが分かり、更にはピアの話も…。
タイトルの意味は想像通りだったが、予想以上におぞましかった。日本に限らず世界中にこういう話はある。
人間は無償の愛を捧げる一方で、こんな残忍な行為も出来てしまう。恐ろしい。
加害者というのは何も直接的に何かした者だけではない。見て見ぬ振りをした者、見たくなくて逃げた者も含まれるのではないか。
しかし闘いたくてもこんな酷い返り討ちをされたら躊躇する。
オリヴァーとピアは一体どう立ち向かい、勝てるのか。
軸が見えてくる中盤以降は最後の最後までハラハラする展開の連続だった。
今回の作品では、つくづく人は見かけによらないことを思い知らされた。
今までイメージ最低だったあの人にこんな事情があったとは。またその逆も。
なんだか大沢在昌さんの新宿鮫シリーズを彷彿とさせる。
もう一つ、訳者さんのあとがきにもあったが、今回は母親と娘の様々な形も描いてあって興味深く読んだ。反抗期でも思春期でも難しい年頃でも、何らかの形でコミュニケーションを取ろうとする努力は必要だなと改めて感じる。
シリーズとしては、このところ「らしくない」オリヴァーだったのが、プライベートの問題が一段落して「らしい」オリヴァーが戻ってきたのが嬉しかった。
またピアの方もプライベートは順調。クリストフ、どうかこのままピアを支えて欲しい。
同僚では堅物のクレーガー鑑識課課長の新しい一面や活躍を見られて面白かった。
本編とは離れるが、作中ハルク・ホーガンの名前が出てビックリ。ドイツでもプロレスって人気なのか。
- 感想投稿日 : 2019年12月14日
- 読了日 : 2019年12月14日
- 本棚登録日 : 2019年12月14日
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