ドイツの警察小説・オリヴァー&ピアシリーズ第八作。
一年間の長期休暇(サバティカルというらしい)を年明けに取ることにしたオリヴァー。今回は休暇前の最後の事件となる。しかし事件の被害者や関係者はオリヴァーの知人ばかり。更にはオリヴァーにとってはとても苦い、少年時代に起きた不幸な事件を甦らせることにもなる。
これまで様々な国内国外様々な警察小説を読んできたが、警察官のキャラクターも様々。悪徳警官もいれば正義感の塊のような警官もいる。どんな悪意や憎悪も跳ね返す強いメンタルの持ち主もいれば、いつまでも引き摺ってしまう警官もいる。
オリヴァー自身は事件と上手く距離を取って来た、などと評価しているが、これまでシリーズを読んできた人間からは引き摺られまくりのごく普通な人間だ。そして今回、彼の少年時代が明らかになったことでその印象は更に強まった。
貴族階級の生まれでスマートで優しくて、でもどこか気弱で鬱屈を抱えている。少年時代の彼は正にそのままだった。いわゆるリーダー格の不良少年たちに逆らえず、何とか距離を保って付き合っていた図が目に浮かぶ。
改めて、舞台のルッペルツハインという地域もコミュニティも狭くて、人間関係が濃いなと思う。オリヴァー自身、町の人たちは子どもの頃からの付き合いが多いし、あるいは親の代、さらにその上の代からの付き合いもある。
なのにオリヴァーは友人や知人同士が結婚したり別れたりしたことを知らなかったりもするのだが。
それにしてもこういう場所で警察官の仕事をするのはやりにくくないだろうかと改めて思う。特に今回はピアが心配して捜査から外れるように助言するほど事件はオリヴァーの周囲で起こる。
相変わらずのページ数と長い人名と登場人物の多さでなかなか読み進まなかったが、結末としては謎が解けてスッキリした部分とあまりの身勝手さ残酷さに腹立たしい気持ちとが織り混ざる、シリーズお約束の読後感だった。
そして思うこと。オリヴァーは女性を見る目がない!元妻といい、元彼女といい。今回の彼女カロリーネはどうだろうか。上手くいくと良いのだが。
そして娘のゾフィアはこれまた元妻に似て厄介な感じ。これからも苦労しそうだ。
一方のピア。オリヴァーに代わり今回の事件の指揮を取っているがすっかり慣れたもの。たまにヒステリックになることはあっても上手くチームを率いている。そしてオリヴァー休暇中は後任として課長になることが決まった。
既に次作は本国で発売されているようだが、オリヴァーは不在で物語が進むのか、ピアはどんな活躍をするのか。訳者さんの予告によるとピアの家族にまつわる秘密が明かされるらしい。
※シリーズ作品一覧
本国での出版順なので日本語翻訳版の出版順とは違います。
(★はレビュー登録あり)
①「悪女は自殺しない」
②「死体は笑みを招く」
③「深い疵」★
④「白雪姫には死んでもらう」
⑤「穢れた風」★
⑥「悪しき狼」★
⑦「生者と死者に告ぐ」★
⑧ 本作 ★
- 感想投稿日 : 2021年11月17日
- 読了日 : 2021年11月17日
- 本棚登録日 : 2021年10月13日
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