インディゴの夜 (創元推理文庫 M か 5-1)

著者 :
  • 東京創元社 (2008年3月11日発売)
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感想 : 264
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久しぶりの再読。
初読は単行本で読んだが今回は文庫の方で。
単行本の初版が2005年なので15年も前の作品なので時折時代を感じる部分もあるが内容は変わらず面白い。
私にとっての初加藤作品は確かこの作品だった。

『クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに』
という、主人公・高原晶の何気ない一言から相棒・塩谷馨と経営することになった<club indigo>は、ホストもスタッフも個性派揃い。
そのindligoのメンバーたちが様々な事件に遭遇したり応援を頼まれる度にホスト探偵団を結成し奔走し解決へと導く内容だ。

こう書くととてもコミカルでユーモア満載のドタバタミステリーっぽいが、改めて読み返してみると結構ハードボイルドしている。
文体は軽快だし時折挟まれるユーモアも楽しいのでテンポよく読めるのだが、苦い結末の話も混ざっていた。

当時はあまり注目されていなかった『多様性』という言葉ぴったりな作品だなと思う。
何しろ『客の顔と名前を覚えられない』というホストとして致命的な欠陥を持っているジョン太が店ナンバーワンになれるくらいだし、他にも2メートルの巨漢キックボクサーだの元ナンパ師だのお笑い芸人風の見た目だの様々なホストがいる。
源氏名も犬マンとかDJ本気(マジ)とか山田ハンサムとかふざけた名前がずらりと並ぶ。
だが晶も塩谷も、表向きオーナーで教育係の憂夜も彼らのことを否定しない。

憂夜に至っては全くの謎の人物(塩谷は知っているらしい)がなぜか晶は素性や過去について突っ込むことが出来ず、それはそれで受け入れている。
晶や塩谷はindigoの繁盛により十分すぎる収入を得ているにも関わらず、表稼業である出版業だったりライターとしての仕事は辞められない。

一方で歌舞伎町のトップホスト・空也のような王道ホストや50過ぎた男で柔道技が得意ななぎさママのようないかにもな人たちもいる。

人間の数だけ様々な考え方や価値観、生き方があって、それを否定されることなく堂々と生きている姿が描かれている。
だがそれは別の誰かを否定したり傷つけたりしないということが大前提であって、それが起きた時は晶は容赦しない。でも助けを求められれば『話を聞いてやってもいい』と言いつつ必死で奔走する。
日頃上から目線でガラの悪い塩谷ですらそうなのだ。

小5の生意気でおませすぎる女の子も裏を返せば必死に闘っていたし、ホスト達も出版業界の人たちもそうだった。懸命に頑張っている人たちを応援するのがホスト探偵団という位置づけだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サスペンス・ハードボイルド・探偵
感想投稿日 : 2022年5月21日
読了日 : 2022年9月28日
本棚登録日 : 2022年5月21日

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