関東近郊の高原にある仕舞屋ペンション(?)が舞台の群像劇。12章からなる。
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やはりうまいなあと思いました。
その古びた建物の名は「ムーンライト・イン」。かつてペンションだったそこは現在シェアハウスになっています。
家主は善良そうな老紳士ですが、入居者の3人は皆いわくありげ。老・中・若と年齢がバラバラの女性たち。
そこに紛れ込んできたのがバックパッカーの男。もう 35 歳にもなって根無し草人生を送る、いわくがありそうで人物です。
ということで、つかみはバッチリの幕開けです。
結局、全員が逃亡人生で「ムーンライト フリット」(夜逃げ) となって「ムーンライト・イン」に集結したというよくできた設定の物語。
それぞれが抱える事情はミステリー小説のような深刻極まるものではないのだけれど、それが却って身近に感じられるところも、物語の魅力のひとつになっています。
逃亡人生には必ず終わりが来るものなので、この4人の住人にも清算の日がやってきます。そのクライマックスへの持って行き方も絶妙でした。ミステリー小説でもないのに何かドキドキします。
クライマックスでかおるさんが虹さんのもとを去り、長年にわたる純愛が潰えたかと見せておいて、エピローグでマリー・ジョイにさり気なく謎解きをさせ、さらにそのマリー・ジョイと拓海の仲を成就させてしまうエンディング。いやまったく最高のデザートでした。
個人的にはすごく好みの作品です。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ヒューマンドラマ
- 感想投稿日 : 2023年3月30日
- 読了日 : 2023年3月28日
- 本棚登録日 : 2023年3月28日
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