逢沢りく 下

著者 :
  • 文藝春秋 (2014年10月23日発売)
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本棚登録 : 919
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 好きな時に涙することができる美少女・逢沢りくの覚醒と成長を描いた作品。上下巻からなり本作は下巻。

      * * * * *

 関西で繰り広げられる、まるで漫才のようなやりとり。出会う人たちが見せる自分への距離感。戸惑い、毒気を抜かれつつも、しだいに自分の中の変化に気づいていくりくが描かれています。

 例えば谷口ジローさんの絵のような精密なタッチではないし、心情描写が克明に描かれているわけでもありません。なのに、登場人物の想いがきちんと伝わってくるのです。これは文芸作品と言ってもいいでしょう。

 直截的な物言いはせず、相手に察してもらう話し方。りくの両親と大叔母夫婦。どちらも同じですが、察してもらう中身が違いました。
 自分への優しさを要求するりくの両親。相手や周囲への思いやりを込める大叔母夫婦。その差は大きい。

 りくへの思いやりをセキセイインコが知らせてくれるシーン。さらに時ちゃんが見せるストレートな好意。
 それらに触れることで、本当の意味での感性や自立心が育っていなかったりくの心が解きほぐされ変化していくラストシーン。本当にすばらしかった。名作だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画 青春物語
感想投稿日 : 2022年7月27日
読了日 : 2022年7月27日
本棚登録日 : 2022年6月3日

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