古書店営む傍ら、作家活動をしている人と聞いて、以前から一度読んでみたかった。
まさしく古書に絡む作品。
江戸時代の、徳川家の文庫(紅葉山文庫)を守る同心たちの物語。
公方様の本、神君家康公の御手沢本に万一のことがあっては、と、挟まっているごみのようなもの、汚れまで一々記録を残すお役所的な発想に、思わず苦笑。
と当時に、学生時代、大学の古典籍調査のバイトをしていた頃のことを思い出した。
たしかに、ネズミの糞とか、挟まっていたりしたよなあ(我々の仲間内では、「ロス・フンチョス」と、ふざけて呼んでいたっけ)。
持ち上げた瞬間、綴じ糸が切れて崩壊するとか。
私たち学生バイトが扱っていたのは、割と出回っている江戸期の版本で、それほど貴重でもなかったんだろうけど。
真っ黒になった指を思い出し、今さらながらちょっと身震いした。
異常な記憶力の持ち主で、御書物同心を嫌々勤めていた角一郎が、生きる道を見いだしたので、少し読後感はよくなったのだけれど。
一篇一篇の話は、モチーフが緊密に結びついていて、さすがだなあ、と思わされる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年9月9日
- 読了日 : 2016年9月9日
- 本棚登録日 : 2016年9月9日
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